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仮想世界

―目が覚めると、見慣れない天井が瞳に映し出された
いや、なんだろう、酷く懐かしい気がする・・・
ずっとずっと前に、見たことがあるような気がする・・・
ホラ、あそこにどうして出来たか分からないシミも・・・
この、高級そうな電球の傘も・・・
やっぱり、懐かしい。

あ、思い出した―

「ラインー?いつまで寝てるの?今日は約束があるって言ったわよねー?」

ここは、デサイアに引き取られる前に暮らしてた我が家だ。
階下から小気味良いまな板を叩く音と、女の人の声が聞こえる
・・・女の人?
私は寝巻きのまま、急いで階段を駆け下りた
まさか、有り得ない。この声は、だって―!
そして、居間に通じる扉を、勢いよく開いた
「あら、起きたのね?って、やだ。あんた着替えくらいしてから下りてきなさいよ」
まな板を叩く手を止めて、女は言った。
本当に、有り得ない。

「おかあ・・・さん?」

有り得ない!有り得ない!
だってお母さんは、死んだ筈なんだ・・・
私が小さい頃に、事故で・・・!
「なに?寝ぼけてるの?ホラ、顔でも洗ってしっかりしなさい」
その言葉に促され、私はふらふらと洗面所に向かった
歯を磨き、顔を洗ってスッキリした。
でも、タオルで水滴は拭えても、疑問は拭えなかった
どうして、お母さんが・・・?
「どうした?レイル?ラインは起きたのか?」
また、聞き覚えのある声が耳に飛び込んでくる・・・。
死んだ筈のお母さんが、生きているという事は・・・?
「寝ぼけてるみたいだったけどね」
母は苦笑する。そして―
「どう?あの子が準備するのにもうちょっとかかりそうだからコーヒーでも飲む?スティック?」
聞き間違えることなく耳に届く声。
スティック、お父さんまで生きている―?
ああ、飲もうか。なんて声が聞こえ、居間ではゆっくりとした時が流れていた
ラインは、どこか怖くて、居間には顔を出さず、自室に戻って服を着替えた

更新日:2009-10-28 06:08:31

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