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7日目

最終日。

明日の朝までに梨桜に逃げられなければ、湯弦の勝ち。
今日は梨桜も本気で逃げるつもりでいる。

このゲームの影響で、湯弦の綺麗な顔には既に大きなクマが出来ていた。
極度の睡眠不足と疲労。

湯弦は肉体的にも精神的にも限界を感じていた。
そのせいか、今まで弟か息子のように感じていた、今隣で眠っている"お姫様"が
憎くてたまらない。

このまま首を絞めて…とも考えたが、うなされている梨桜の顔を見て止めた。
湯弦はベッドから起き上がると、適当にあった服を着た。
「さて、やるか」

12時過ぎ。
「梨桜、昼だぞ。いい加減起きろ」
梨桜は渋々目を開けた。
「もうちょっと寝かせてよ…昨日ヤりまくってヘトヘト」
「うるさい。シーツ換えたいから、さっさと起きろ」
今日の湯弦は容赦がない。

「もぉ。何だよ?こないだまで嫌々だったクセに…疲れた時に限って、ハァ、4回も…」

渋々起きた梨桜は、湯弦に洗濯して貰ったジャージを着た。
梨桜が服を着るや否や、湯弦は梨桜の後ろ手に手錠をかけた。
「ハァ。いきなりVIP待遇だねぇ。ハァ」

今日の梨桜にいつものような元気は無かった。
顔は赤く、息が荒い…明らかに風邪だ。
湯弦は気にせず梨桜をダイニングの椅子に縛り付けた後、体温計を脇の下に差し込んだ。

38.62℃。

「やっぱり、風邪引いたみたい。ちょっと、手錠外して寝かせて?」
湯弦は無視して、非常用のカップ麺に湯を注いだ。

「これ食べたら考えてやる」
「手が使えない」
「食べさせてやる」
「……。」

湯弦は梨桜の後ろに周り、フォークを使って麺を梨桜の口へ運んだ。
無言で進む単純作業。
怖い位、静かな時が流れていった。

更新日:2009-01-04 17:04:21

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