• 23 / 33 ページ

5日目

「……。」
湯弦はウォークインクロゼットで眠る梨桜を引きずり出した。
縛った縄等は殆ど外されたが、手錠は外せなかったようだ。
顔には泣きじゃくった跡が見られる。

「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
梨桜はその言葉を、うわ言の様に呟いた。
湯弦も、梨桜の顔を見ようとはしない。

「ご飯…机に置いとくから適当に食べろ。」
一言そう言い放った湯弦はさっさと学校へ行った。

授業を受けている間、湯弦は梨桜の事が気になっていた。
ずっと泣いていたし、寝起きの顔は相当酷かったし、余程傷ついたと思われる。
おまけに朝もあの調子だ。

確かに、男なのにそれを否定された上、逆上してアレは酷いか。
怒っていたとはいえ、やりすぎたと湯弦は反省していた。

丁度授業が15分も早めに終わった事もあり、
湯弦はご機嫌取りにケーキを買って帰る事にした。

外は雨がポツポツと降り始めていた。
「ただいま………梨桜?」
そこに梨桜の姿はなかった。

湯弦は傘を傘立てに突っ込み、ケーキの入った箱を机に置くと、部屋中を探し回った。
「梨桜?隠れてるのか?昨日はごめん。だから、出て来いよ。」
しかし、全く返事が無い。

湯弦の頭に様々な不安がよぎった。
自ら考えたルールを破り、警察へ駆け込んだ?
ただ逃げ出しただけ?
それこそ自殺でもしたんじゃないか?

家に帰ってから30分。
外きらは激しい雨音が聞こえる。
少し、外に探しに行ってみようか?

湯弦がそう思って近づくと、ガチャリと玄関のドアが開いた。

玄関先には、ピンクのドレスに長い金髪の人が立ってる。
「…バカ」
湯弦は、ずぶ濡れの女装した梨桜を抱きしめた。
「…女でいいから……冷たくしないで………捨てないで」
梨桜も更に激しく湯弦に抱きついた。
「バカ。本当に馬鹿だよ。アンタ……。」

そのまま数分の時が過ぎた。
濡れて冷たくなった梨桜の体温が、みるみる温かくなっていく。

不意に湯弦は手を緩めた。
「さぁ、風邪引くから、中に入ろ。」

更新日:2008-12-28 02:46:17

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook