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1日目

茅野湯弦(カヤノユヅル)は、人生で最も幸せな日々を送っていた。

苦労したけど、希望の大学にも入れた。
美世子(ミヨコ)という彼女も出来た。
友達も沢山いる。
そして、やっと親から離れて一人暮らしができた。

例えるなら、この少し曇った空の隙間から差し込む光のような、そんな希望に溢れた日々。
幸せの絶頂期、そんな感じも彼はしていた。

だが、長くは続かなかった。


何て事は無い、彼女とただの痴話喧嘩。
原因は、お味噌汁の具について。

誰もいない海の見える高台の展望の上で、湯弦と美世子の口論が激しさを増した。
そのうち湯弦は美世子を突き飛ばしてしまった。
美世子は高台から、青黒い海へと吸い込まれた。

彼女の死は事故として処理された。
ショックはあったが、湯弦としては既に気持ちが離れていたので、彼女の死から
立ち直るには不思議と時間はかからなかった。

ただ、人を殺めた事実に何処か後ろめたい感情を抱いていた。

そのせいか、美しく整った顔は酷く疲れ、まだ19とは思えないほど老けて見えた。
周囲には、それが彼女を失った悲しみからきているものに見え、余計に同情を誘った。
だがそれも、1ヶ月も経てば、元に戻った。

更新日:2008-12-07 00:47:52

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