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テロリストの狼狽

 帰りは行きと違って検問も無く、高速道路を通って一気にポリスコアの下まで降りられました。
 途中でパトカーを乗り捨てたわたしたちは、今度はかなりの距離を歩いて五番街の中心街“アベニュー17”と呼ばれる場所にある、アパルトマンの一室に連れてこられました。
 ミオの話では、ここが例の立ち聞きした場所で、隣がミオの借りている部屋だということです。
 部屋には誰も居ませんでしたし鍵も開けっ放しでしたが、ボロテーブルの上にはいくつもウイスキーの空き瓶とグラスが転がっているので、まだ誰か住んでいるのでしょう。
 ジャッキーは別に気にすること無く、部屋に入るなり隅に置いてあった端末のスイッチを入れました。
≪――ご覧下さい。この通り事件現場では地元の消防や軍による必死の救助作業が続けられています…≫
 ジャッキーが入れたチャンネルは、今朝の列車爆発事件のニュースです。ちょうど事故現場を上空から中継していました。
 わたしもとても興味がありましたので、ジャッキーの隣に行ってその画面にその映像を食い入るようにのぞきこみました。現在の時刻は十一時四十五分。事件があってからすでに二時間以上が経過しています。
 それは最悪でした。一体どうしたらこんなになってしまうのでしょうか。
 事件のあった現場は、どうやら川にかかった鉄橋の上だったらしく、列車というよりは、その鉄橋ごと目茶苦茶に壊れて、残骸がすべて川に落ちているのです。もはやどれが車両でどれが鉄橋だったのかわからないくらいですし、鉄橋の土台すら崩れ落ちて無くなっていました。
 たくさんの救急車やパトカー、それに目まぐるしく動き回っている救助隊員の姿があちこちに見えますが、何しろこんな状態ですから、当然乗客の救出作業もかなり難航していることでしょう。果たして一人でも生存者が居るのか、それすら疑わしい気持ちになってきます。
「…目茶苦茶や。爆弾かミサイルでも当たらな、こないバラバラならへんわ。」
 ミオもそれを見て顔をこわばらせています。わたしもまさにその通りだと思いました。
≪こちらに入った連絡によると、チャン外相らしき男性の遺体が発見されたとのことですが、現場ではどうですか? 外相の遺体は確認できたのでしょうか?≫

更新日:2009-10-01 00:12:52

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超時空物語RAIN 第一部 わたしの仲間たち