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首都下水道

 翌朝七時頃、わたしたちは揃ってジャッキーに起こされました。
 ジャッキーは夜の間にいろいろ準備をしてきたらしく、またどこから持ってきたのかわからない古い作業着を二着わたしによこして、自分もその作業着を着て右頬の傷を化粧で隠していました。
 言われるままに作業着に着替え、五番街の東にあるバス停へ連れていかれると、そこにはたくさんの労働者たちが集まっていました。
 みんな疲れた表情をしていて、あまり話し声もしておらず、他人には無関心な様子です。
 そしてそこにやって来たのは、政府が移民の人たちに斡旋している建設の仕事の送迎バスでした。
 バスは普通の乗り合いバスと同じ大きさで、全部で六台。八時きっかりにそこを出発し、どうやらこれから都心部へ向かうようです。
 どうやって手に入れたのかわかりませんが、予めジャッキーに渡されていた斡旋就労者の証明書を目つきの悪い係員に見せると、すんなりとバスに乗れました。
 入ってみて気がついたのですが、車内にはなぜか座席が一つもありません。みんな立ったままぎゅうぎゅう詰めにされて、全く身動きがとれないくらいです。
 途中一ヶ所で、検問があるという運転手の説明があってしばらく停車していました。何人かの警察官が外からバスの回りを一台一台見まわるだけの簡単な検問です。
 どちらにせよ、少しでも逃げ出そうというそぶりを見せれば、ジャッキーに殺すと言われていたのでどうすることもできません。
 わたしのすぐそばにはミオが窮屈そうにしていて、わたしは彼女にもそこらへんのことは充分言い聞かせていましたから、彼女も検問中に暴れたり声を出したりしませんでした。
 ジャッキーはわたしたちから少し離れた所に立っています。彼は顔がわれていますから、ハンティング帽を深々とかぶっていて、顔ははっきりと見ることができません。彼の服の下にはきっと武器が隠されている筈です。

更新日:2009-09-30 21:09:07

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超時空物語RAIN 第一部 わたしの仲間たち