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テロリストの男

 わたしは眠い目をこすりながら、頭上に設置された網棚からショルダーバッグを降ろすと、その中から小さな携帯電話を引っ張りだして応答ボタンを押しました。
「…はい、」
 わたしが電話を耳に当てて返事をするや否や、関を切ったように相手の男はしゃべり始めました。
≪――レイン君か!? わたしだ、ルイだ!≫
「あ、隊長…?」
 名前を聞いてわたしは驚きました。彼はわたしが配属されているルーブラ管轄区第七警邏(けいら)隊の隊長で、わたしの直接の上司に当たる人物なのです。
≪こんな時にすまないが緊急事態だ! すぐに支度をして、9号車へ向かってくれ!≫
「…は?」
 わたしはルイ隊長が何を言っているのかすぐには飲み込めませんでした。まだ頭がぼんやりとしているし、第一ここは列車の中です。一体何の緊急事態だというのでしょう。
 すると彼はわたしが当惑しているのを察したのか、それまでより落ち着いた口調で説明を始めました。
≪連邦公安局からきのう通達があったミュンツェルンのテロリストが、君が今乗っている列車に忍び込んでいることがわかったのだ。今カオス君たちから、9号車でそいつを発見したと連絡が入った。奴は強力な武器を携行しているかも知れん。君もカオス君たちと協力して、一刻も早くそいつの身柄を拘束するんだ!≫
「テロリスト? カオス先輩が?」
≪そうだ、彼には前もって君とは別行動をとるように言っておいたのだ。とにかくくれぐれも乗客に被害を出さぬよう頼む。いいか、9号車だぞ!≫
「は、はい!」
 さぁ、大変なことになりました。
 わたしは制服の胸ポケットに電話を押し込みながら、すぐに辺りを見回しました。そして、反対側の座席の上に置いていた自分の電子サーベルと自動式拳銃を腰に装着すると、すぐにドアの所までかけ寄ったのですが、はっと気がついてまた引き返して、バッグから名刺サイズのカードキーを取り出しました。

更新日:2009-09-28 23:22:35

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超時空物語RAIN 第一部 わたしの仲間たち