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エゴイズム

 わたしと、わたしがぶつかった女の子は、そろって元の空き家に放り込まれました。ジャッキーはとても機嫌の悪そうな雰囲気で、床に転んだわたしたちをじっと見下ろしています。
「何するねんアホ! うちをどないする気や!?」
 すべてが骨折り損になってしまってガックリしているわたしに比べると、その女の子はとても元気でした。ジャッキーに向かっていきなり罵声を浴びせたのです。
「まさか自分、うちみたいな美人の女の子ばっかりさらう人買いやないやろな! 冗談やあらへんでホンマ! はよこっから出し!」
「――おまえは殺す。」
 女の子のセリフにもあきれましたが、ジャッキーのその言葉にはもっとあきれました。一体この二人の間に何があったというのでしょうか。
「なんやて? うちが何したっちゅーねん!? そりゃうちは、あんたらの話し声は聞いたけど、何話しとったかまではさっぱりわからへんねんで! せやのになんで殺されなあかんねん!?」
「………」
 ジャッキーは女の子の言うことにも全く耳をかさない様子で、ゆっくりと拳銃を取り出しました。しかもその拳銃は、きのうわたしから奪ったG‐100です。
「や、やめなさいよ! 何があったか知らないけど、あなたにこの人を殺す権利なんてあるの!?」
 たまらずわたしは横から止めに入りましたが、ジャッキーはわたしをチラリと見ただけで、少しもためらうことなく銃のスライドを引きました。それでわたしは完全に頭にきました。
「やめなさいって言ってるでしょ! あなたってほんっとに最低ね! わたしやこの子みたいな無抵抗の女性を自分の都合のために次々とさらって、人質だの殺すだの勝手なことばかり! 男として恥ずかしくないの!?」
 わたしは二人の間に割って入って、隣の女の子に負けないくらいの大きな声でここぞとばかりに言ってやりました。なんだか同じ立場の人がもう一人居ると思うと心強くて勇気が出ます。
「どけ。」
 でもやはり、それくらいの言葉で引きさがるジャッキーではありませんでした。銃口をこちらに向けて冷たくわたしに言ったのです。

更新日:2009-09-29 20:55:01

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超時空物語RAIN 第一部 わたしの仲間たち