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「ちょっと待ってよっ・・・!」
僕は咄嗟に叫んでいた。
図書室の中の数人が、こちらへと視線を送ってきた。
僕は一つ深呼吸をすると、ゆっくりと彼女の手を握った。
「一度だけ、君としっかり話がしたいと思っていたんだ。いいよね?」
彼女の眉が、一瞬ぴくりと動いた。しかし彼女は、ゆっくりと頷いた。
「・・・ありがとう」
それだけ言うと、僕は彼女を連れて、とりあえず図書室を離れた。あそこは話すには向かない。もっと人が少なくて、話しても怒られない場所。
「屋上に行こう」
僕は彼女の返事を待たず、早足で屋上へと歩を進めた。

屋上への扉を開けると、暖かい風が僕らを迎えてくれた。下にある桜の木も、その身を削って僕らに花びらを届けていた。
僕らは無言のまま、鉄格子まで歩いていった。そして、ゆっくりと手を離してあげた。
「・・・僕――」
「彼女は苦しんで死んでいったと思う?」
僕は驚いて、彼女の顔を見つめた。彼女がいきなり口を開いたからじゃない。まるで、「キミ」を・・・「キミ」の最期を知っているような口ぶりだったからだ。
「・・・ごめんなさい。訊くまでも無かったわね」
彼女がゆっくりと、鉄格子へと手をかけた。金髪が風に揺れる。
「彼女が苦しんで死んでいったと思うから、時々そういう顔をするのよね」
彼女の瞳が、遠く・・・遥か彼方を見つめているような気がした。いやそれは、遠い記憶を見つめているのかもしれない。
「・・・貴方に全て話すわ」
彼女の真剣な眼差しが、僕の心を射抜いた。


更新日:2009-10-11 12:02:55

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