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キミはまた悲しそうな顔で、静かにそう言った。
「僕は飽きちゃうなあ。それに、ずっと綺麗なものなんてないよ」
僕はすぐに反論した。それは本心だった。この世に、「綺麗」を永続しているものなんてない。あの頃は本気で、そう信じていたのだ。
「・・・そっか。みーくんはそう思ってるんだね」
一瞬だけ、キミの瞳が悲しみで揺れたのを、今でもはっきりと覚えている。
きっと辛かったのだろう。きっと苦しかったのだろう。でもキミは、そんな時まで、一言も弱音を吐かなかった。
あの時も、それだけは分かっていた。だからこそ、僕の鼓動は速くなった。
「どうしたの?目にゴミでも入った?」
今思えば、冗談にもなっていない言葉だった。
それでもキミは、小さく首を縦に動かし、微笑んでくれた。
「そうみたい。でも、もう大丈夫だから。ありがとね、みーくん」
「どういたしまして」
僕は苦笑いをするしかなかった。



その日の夜・・・――桜は静かに散った・・・・・・。




更新日:2009-09-28 13:31:06

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