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消えたキミへ

 僕の愛するキミへ
  
  元気にしていますか?お手紙ありがとう。僕は元気だよ。
  僕は、キミのことがずっと好きだったんだ。キミが切なそうな顔をしていれば、僕も胸が
  苦しくなったよ。でも・・・僕は自分が思ってたよりも、臆病だった。キミに理由を訊いた
  ことは、一度だってなかったね。
  言い訳にしか聞こえないけど、僕は怖かったんだ。キミの心に触れるのが・・・。だから
  ずっと、理由をつけて逃げ回ってたんだ。キミは僕のことなんてなんとも思ってない。僕
  なんかがいなくても、いっぱい友達がいる。きっと他の人に相談してる―色々考えたな。
  考えすぎて、キミに会いに行けなくなった時もあったな。
  それでも次の日、おそるおそる来た僕に、キミは笑ってくれたね。「お腹壊したの?」って
  僕が来ない度に訊いてくれたよね。
  キミは辛かったんだね。僕を待っていてくれたんだね。気付いてあげられなくてごめんね。
  ずっと一人で苦しませてごめんね。こんな僕を許してほしい。もう、キミの目の前で笑って
  あげることも、キミを抱き締めてあげることも出来ないけど、ずっと愛してるよ。
  僕は怒ってないよ、キミが何も言わなかったこと。だって、聞いたら僕も一緒に死んでた
  かもしれないんだ。キミが僕の命を助けてくれた。感謝してるんだ。
  最後まで傍にいてあげられなくて、ごめんね。今でも、本当に悔しいんだ。キミが苦しん
  でいるのを、僕はずっと気付かないようにしてたんだ。
  そして僕は、キミを失った。僕が一緒にいてあげてたら・・・どうしたの?って訊いていたら
  キミは死ななかったかもしれないって思ってるんだ。本当にごめんね。今思えば、キミを
  失うことより怖いことなんて、何一つなかったのに。自分が傷つかないようにしてたんだ。
  謝ってもキミはもう、帰ってこないけど、キミを愛してたことだけ伝えたい。
  苦しくても笑ってくれていたキミが、本当に好きだった。「綺麗なものなんてない」なんて
  言ってたけど、本当は違うんだ。
  キミは本当に綺麗だった。心の中も、全て綺麗だった。きっと、死ぬ時まで綺麗だった
  んだろうな。そう思うと、何だか泣けてくるね。
  今だけ・・・泣かせてほしいな。もう泣かないから。前を向いて生きるって約束するから。
  僕はもう逃げないよ。背中を向けないよ。
  それは全部、キミが教えてくれたこと。
  本当にありがとう。
  本当に愛してるよ。
         
                                               キミの婿より 

更新日:2009-10-20 13:35:39

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