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小説

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子供の頃のトラウマ

ずっと昔、子供の頃のトラウマの話を二つ。

幼稚園の年長組当時、私は給食の「ポテトサンド」が嫌いだった。パンの中にポテトサラダが挟まっているサンドイッチである。食べ方が下手で、喉に詰まらせてしまうのだ。イモとか、ゆで卵とか。そういう食材がダメだった。
ある日の給食に、ポテトサンドが出た。嫌だなと思いながら、なんとか全部食べた。その、翌日。
担任の女性教師が教室で何やら騒いでいる。その周囲を園児達が囲んでいる。先生の手元を見ていたら、ある子の机の中から、食べかけのポテトサンドが出てきた。
そのうち先生は、机の中に食べかけのポテトサンドを放置した「犯人探し」を始めた。周囲にいる園児達に、一口ずつその不衛生なポテトサンドを食べさせたのだ。私にも、それは回って来た。先生が、私の口元にそのポテトサンドを持ってきた。
私は、いっしゅん考えた。
(どうしよう。こんなの食べたくない。でも。食べなかったら私が犯人だと思われてしまう)
だから、私は食べた。普通の顔をして。まずそうな顔なんかしちゃいけない。私は犯人じゃないんだから。しばらく先生は私の顔色を見ていたが、また別な子に残りのポテトサンドを食べさせ始めた。

その幼稚園は、お寺で経営されていた。ある日、幼稚園の関係者の葬儀がそのお寺で行われ、園児も全員参列させられた。皆で、小さな椅子に腰かけていたら。私の足元に後ろから小石が飛んできた。その石は、私の足に当たったり、通路を転がっていったりした。何だろう、男子がふざけているのかな、と思った。
そして、葬儀が終わり教室に戻ったら先生に呼びとめられた。
「葉論ちゃん! 石なんか投げて、ダメでしょう!?」
確かに先生はそう言った。
私はびっくりして固まってしまった。
(先生、それは誤解です)
そう言おうかと思った。たしか大人はこんな時、そう言ってたような気がする。誤解なんて漢字書けなかったけど。“ひらがな”でそう思った。だけど、幼稚園児が「誤解です」なんて言ったら変だよね。とも、思った。
結局、なんて言って良いのか言葉が出てこなくて、何も答えられなかった。
(どうして、先生は私を怒るんだろう。私じゃないもん、私、石なんか投げてないもん!)
その言葉が、出てこなかった。頭っから私がやったと思っている先生の恐い顔の迫力に負けてしまったのかも知れない。

子供ってさ。けっこう色々考えているものなんだと思うのだ。大人並みに気を遣ったり。でも、いろんな事情があって、うまく言えず言葉を飲み込んじゃってる場合もあるんだと思う。

きっと人に話したら、そんなのトラウマって言わないよって言われるかも知れない。トラウマってのはもっともっと大きな傷、体に傷跡が残るようなのを言うのかもしれない。でも、何十年も経った今でも、この二つの出来事はしっかりと苦く心にひっかき傷を残している。


更新日:2009-11-12 21:46:11