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 「おい、何読んでるんだ?」

 学校の休み時間。机に座って本を読んでいたら、友達が声をかけてきた。
 あれから数日が過ぎて、僕の生活は前の通りに戻っていた。
 あれから夢は見ない。だから僕は夜を待ち侘びることもなくなった。

 「なになに……『なぞなぞ怪人のちょうせん状』? 何だこれ? 子供むけのゲームブックじゃないか。こんなの買ってどうすんだよ?」

 友は対面に座り、僕が読んでいる本の背表紙をのぞき見してくる。

 「参考資料。これを完成させるためのね」

 僕は机の横に下げてある鞄から一冊のノートを取り出して見せた。珠李さんが残したなぞなぞノート。

 「何だよこれ? 下手な絵だなぁ」
 「いいんだよ。下手でも」

 僕は最近、このノートの後半の空白を埋める作業をしている。
 ゲームブックからインスピレーションを得て、新しい問題を思い付いつき、色鉛筆を走らせる。また幼稚な問題と下手な絵でノートが一ページ新たに埋まった。

 「気持ちさえこもってれば、それでいいんだ。友達への贈り物なんて、そうゆうもんでしょ」

 完成したページを眺めて頷くと、僕は再びノートを鞄にしまった。
 将来、僕に終わりが来たとき、僕はこのノートを持って、彼女に逢いにいく。いつ来るか分からない、『明日』の約束を果たすために。
 完成したノートを見たときの少女の笑顔を夢に見ながら。
 

更新日:2009-11-11 02:47:35

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