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その後熱が上がって、私の風邪は悪化した。
ソファではまずいなと思ったので
部屋のベッドに移動した。


「お医者さん呼んだほうがいいのかな?
でも、来てくれるお医者さんなんか、
物語の中だけだよね?
現実ってどうなってんの?」


セイは心配して言った。

私は笑った。


「まあ、寝てればよくなるよ。
…セイ、おつかい頼んでいいかな。」


「いいよ。何買ってくる?」


スポーツドリンクやたべやすいもの、
ビタミンのはいったドリンク剤などを指定し、
お金を渡した。


「…暑いから、もしかあれなら、
アイス買ってお上がり。」


「オレのことはいいよ。」


セイはそういって、ストローハットをかぶり、
真夏の太陽が照りつける中、
スーパーへ行ってくれた。


少し苦しみながら眠っていると、
ぺた、となにか押し付けられて目がさめた。


「あ…セイ、お帰り。」

「…これ、昨日のプリンの保冷剤。
冷凍してとっといてた。つめたいでしょ。
まんがとかではなんか、
熱出るとデコ冷やしたりしてる。
こういうの気持ちいいんじゃない?」

「うん。」

「…のみもの、おいとくね。」

「ありがとう。」

「…なにか、してほしいことない?」

「大丈夫。」

「…なんかあったら、呼んで。
居間にいるようにするから。」

「ありがと。」


…セイは、
どうしたらいいかわからない様子だったが、
知らないなりに一生懸命だった。

なんとなくほのぼのした。いい子だな、と思った。

スポーツドリンクをぐいぐいのみ、
私はまた眠った。


次に目が覚めたとき、
セイが居間で誰かと口論していた。

私はついでにトイレへいくつもりで起きた。

我々の住いに誰かが来るはずもない。
セイは勿論、電話で話しているのだった。


「…だから、そうじゃなくて…!!
…あっ、…」


私の顔を見て、セイは
自分の声が風邪っぴきを起こしたと気づき、
言葉に詰まった。

それから電話に向かって

「わかった、もういいよ。」

と短く言うと、電話を切った。


私は通り過ぎて先にトイレへ寄り、
出て来てからセイに聞いた。


「…セールス?」

「…いや、なんでもないよ。
起こした。五月蝿かったね。」

「別に。
…もうお昼だね。
私は食欲がないから、
セイ、自分でなんかたべてくれる?
…ファミレス行って来てもいいよ。
行くなら鍵かけてって。」

「何も食べないの?大丈夫?」

「熱があるとどうせ消化しないんだ。
…3〜4日は飲み物だけでなんとかなるよ。」

「ウーン、わかった…」


…セイから誰かに電話したのだな、
とわかった。

だが、ラチがあかなかった、
そのうち私が起きたので
切った…ということのようであった。

…そういうことは、いろいろな意味で
初めてのことだった。

更新日:2009-07-22 13:22:11

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