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セイは私からハガキをとりあげ、
私を座らせた。
私は仕方なく、
バスのネズミのはなしからはじめて、
本山と西川の百物語を話した。
「…西川さんと温泉に入ってたら、
灯りの下になんか見えてさ…
もう二人で震え上がっちゃって…
その話を本山さんにしたら、
本山さん、
私の周囲には
しょっちゅういろんなものがいるとかって
ホントにさらっというんだよ。」
「…からかわれただけだよ。」
セイは少し腹立たしげに言い、ぶつぶつとこう続けた。
「…ったく、どうして平気でそういうこと言うんだか…」
私は続けた。
「そのあと、泊る予定のホテルまで
西川さんが送ってくれたんだ。
そうしたら、またそのホテルで
ベッドの下になにかがぱーっと駆け込むのが見えてさ。
私だけじゃなくで、西川さんも一緒に見たんだよ。
ついてきたのかな?
ねえ、セイはどう思う?
あんなところで怖い話しなきゃよかった!」
「…そりゃしないほうがいいけどね…
でも、ついてきたりはしないよ。
大丈夫。」
「え、ついてこないの。どうして。」
「…しらないけど、
ついてきたりしないよ。
…それでそーさん、テレビの裏や
引き出しがこわくなったの?」
私はおずおずうなづいた。
するとセイはわたしの手を握って言った。
「…ごめんね、あんなこと言って…。
コビトなんていないよ、
嘘だよ、からかっただけ。
だから、安心して。
…いい、ほら、開けるよ?」
セイはそういって、そっと引き出しをあけた。
…そこにはメモとペンが入っているだけだった。
「…温泉にいたのは小動物だと思うよ、
ネズミとかね。
怪談なんかやるから
何か変なものに見えたのさ。
ホテルにいたのは錯覚だと思うよ。
ベッドの下に何か入ったなら、
消えるはずないでしょ?」
「…」
セイはハガキをひっくり返して見た。
「これがあの本山敏和?
ふん、…うまいじゃん、筆字。
…すけべじじい。
そーさんが気に入ったから
気をひきたかったのさ。
日曜の朝のパネリングとか出てるときだって
女は糞味噌にけなして
若い男ばかりほめるようなヤツなんだから。
西川さんはじじいに話合わせて
胡麻すっただけでしょ。」
そう言うと、
引き出しにハガキを放り込んで
ピシャリと閉めた。
「…そういえば、
西川さんがした話は
インターネットで読んだ話だっていってた。」
「でしょ。
…大人なんだから、
そんなバカ話、まにうけちゃ駄目だよ。」
セイはそう言うと、
私の頭をなでなでとなでつけた。
「…おやつ食べようよ。
お茶がいい?コーヒーがいい?
…コーヒーがいいね。気持ちが落ち着く。
掃除機かたづけて待ってて。」
…そしてセイは当たり前に、
私の唇をチュッと吸って、
それからキッチンへ向かった。
…えっ?
と思った。
私を座らせた。
私は仕方なく、
バスのネズミのはなしからはじめて、
本山と西川の百物語を話した。
「…西川さんと温泉に入ってたら、
灯りの下になんか見えてさ…
もう二人で震え上がっちゃって…
その話を本山さんにしたら、
本山さん、
私の周囲には
しょっちゅういろんなものがいるとかって
ホントにさらっというんだよ。」
「…からかわれただけだよ。」
セイは少し腹立たしげに言い、ぶつぶつとこう続けた。
「…ったく、どうして平気でそういうこと言うんだか…」
私は続けた。
「そのあと、泊る予定のホテルまで
西川さんが送ってくれたんだ。
そうしたら、またそのホテルで
ベッドの下になにかがぱーっと駆け込むのが見えてさ。
私だけじゃなくで、西川さんも一緒に見たんだよ。
ついてきたのかな?
ねえ、セイはどう思う?
あんなところで怖い話しなきゃよかった!」
「…そりゃしないほうがいいけどね…
でも、ついてきたりはしないよ。
大丈夫。」
「え、ついてこないの。どうして。」
「…しらないけど、
ついてきたりしないよ。
…それでそーさん、テレビの裏や
引き出しがこわくなったの?」
私はおずおずうなづいた。
するとセイはわたしの手を握って言った。
「…ごめんね、あんなこと言って…。
コビトなんていないよ、
嘘だよ、からかっただけ。
だから、安心して。
…いい、ほら、開けるよ?」
セイはそういって、そっと引き出しをあけた。
…そこにはメモとペンが入っているだけだった。
「…温泉にいたのは小動物だと思うよ、
ネズミとかね。
怪談なんかやるから
何か変なものに見えたのさ。
ホテルにいたのは錯覚だと思うよ。
ベッドの下に何か入ったなら、
消えるはずないでしょ?」
「…」
セイはハガキをひっくり返して見た。
「これがあの本山敏和?
ふん、…うまいじゃん、筆字。
…すけべじじい。
そーさんが気に入ったから
気をひきたかったのさ。
日曜の朝のパネリングとか出てるときだって
女は糞味噌にけなして
若い男ばかりほめるようなヤツなんだから。
西川さんはじじいに話合わせて
胡麻すっただけでしょ。」
そう言うと、
引き出しにハガキを放り込んで
ピシャリと閉めた。
「…そういえば、
西川さんがした話は
インターネットで読んだ話だっていってた。」
「でしょ。
…大人なんだから、
そんなバカ話、まにうけちゃ駄目だよ。」
セイはそう言うと、
私の頭をなでなでとなでつけた。
「…おやつ食べようよ。
お茶がいい?コーヒーがいい?
…コーヒーがいいね。気持ちが落ち着く。
掃除機かたづけて待ってて。」
…そしてセイは当たり前に、
私の唇をチュッと吸って、
それからキッチンへ向かった。
…えっ?
と思った。
更新日:2009-09-28 17:14:52