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19 引き出しが怖い
気分がクサクサしたので、
窓を開け放って掃除した。
夏のころとは違う、清んだ冷たい風がはいってきた。
午後の光も静かで美しい。
掃除機をかけていると、
セイが出て来た。
「あ、うるさかった?」
「ううん、平気だよ。
休憩時間にするし。
そーさん、お掃除おわったら
おやつ食べようか。」
「うん。」
私がうなづくと、
暒太郎もうなづいて、
居間を横切り、玄関に行った。
最近、私が掃除していると、
セイは一緒に自分のところの片付けをしたり、
玄関を掃いたりするようになった。
水曜日の水拭きは手伝ってくれる。
セイの部屋に入ると、案の定、
きっちりかたづけて、窓が開けてあった。
私はベッドの下まで丁寧に掃除機をかけた。
一回りして居間にもどってくると、
床にハガキがおちていた。
私が出した挨拶状に
本山がくれた返事だ。
美しい和紙のハガキに
達筆な筆字でしたためてある。
届いたとき思わず、私も習字をならおうかと思ったほどだった。
電話のそばにおいてあったので
風でおちたのだろう。
私は掃除機を止め、ハガキを丁寧に拾い上げ、
電話台の小さな引き出しにしまおうと
手をのばした。
…しかし、
怖くて自然と手前で
手が止まってしまった。
私は深呼吸をし、みぞおちを押さえて目を閉じ、
自分に言い聞かせた。
ここは私の家だし
今まで変なものをみたことは一度もない。
空気はすがすがしいし、
掃除もおえたばかりだ。
大丈夫、こわくない。
…意を決して目を開けると、
セイがいて、
奇妙なものでも見るように私を見ていた。
「あっ。」
私は思わず赤くなり、
素早く引き出しを開けて、
ぱっとハガキをしまおうとした。
だが、どうしても、どうしても
引き出しがあけられないのだった。
手がかたくなに、直前で停止してしまう。
手首を捻挫したとき、拍手が出来ないのに似ていた。
「…なっ、…なんでもないよ。」
何もきかれていないのに
私はぎくしゃくとそう言い訳し、
ハガキをおとしてしまい、また拾った。
セイは眉をひそめ、
私の手を掴んだ。
「…そーさん。」
「わっ!」
「…そーさん、なんか見たの?」
……バレた。
窓を開け放って掃除した。
夏のころとは違う、清んだ冷たい風がはいってきた。
午後の光も静かで美しい。
掃除機をかけていると、
セイが出て来た。
「あ、うるさかった?」
「ううん、平気だよ。
休憩時間にするし。
そーさん、お掃除おわったら
おやつ食べようか。」
「うん。」
私がうなづくと、
暒太郎もうなづいて、
居間を横切り、玄関に行った。
最近、私が掃除していると、
セイは一緒に自分のところの片付けをしたり、
玄関を掃いたりするようになった。
水曜日の水拭きは手伝ってくれる。
セイの部屋に入ると、案の定、
きっちりかたづけて、窓が開けてあった。
私はベッドの下まで丁寧に掃除機をかけた。
一回りして居間にもどってくると、
床にハガキがおちていた。
私が出した挨拶状に
本山がくれた返事だ。
美しい和紙のハガキに
達筆な筆字でしたためてある。
届いたとき思わず、私も習字をならおうかと思ったほどだった。
電話のそばにおいてあったので
風でおちたのだろう。
私は掃除機を止め、ハガキを丁寧に拾い上げ、
電話台の小さな引き出しにしまおうと
手をのばした。
…しかし、
怖くて自然と手前で
手が止まってしまった。
私は深呼吸をし、みぞおちを押さえて目を閉じ、
自分に言い聞かせた。
ここは私の家だし
今まで変なものをみたことは一度もない。
空気はすがすがしいし、
掃除もおえたばかりだ。
大丈夫、こわくない。
…意を決して目を開けると、
セイがいて、
奇妙なものでも見るように私を見ていた。
「あっ。」
私は思わず赤くなり、
素早く引き出しを開けて、
ぱっとハガキをしまおうとした。
だが、どうしても、どうしても
引き出しがあけられないのだった。
手がかたくなに、直前で停止してしまう。
手首を捻挫したとき、拍手が出来ないのに似ていた。
「…なっ、…なんでもないよ。」
何もきかれていないのに
私はぎくしゃくとそう言い訳し、
ハガキをおとしてしまい、また拾った。
セイは眉をひそめ、
私の手を掴んだ。
「…そーさん。」
「わっ!」
「…そーさん、なんか見たの?」
……バレた。
更新日:2009-08-02 12:55:58