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「えっ…
だって奥さんどうするの??」


「しらんわあんな女。
そーちゃんには関係ないやろ。」


「いやいやいや、
そーれは、関係なくはない。」


「ふん、
私は暒太郎くん、一緒でもかまわないですよ。
暒太郎くんはどうかしらんけど。

それに暒太郎くんが一緒にいても、
私はそーちゃんのこと、我慢しませんから。
チューするし、イチャイチャするし、
夜だろうと昼だろうとヤルからね。」


「えっ…それは…
…それはちょっと…」


私はしどろもどろになった。

都筑があてにできないのであれば、
フリダシニモドルというほどではないにしろ、
原稿の買い手を探すのにはそれなりに時間がかかるだろう。


…西川にその間、清い仲でいてくれと頼むには
私も西川も
少し酔っぱらいすぎている。


だが、セイは私に男の愛人がいるとなったら
いい気持ちはしないだろう。
ましてやそれと寝食をともにしたいとは思うまい。
我慢するとなったら
セイのストレスは極限まで上がるだろう。


…私は、セイに、落ち着いて勉強できる
いい環境を整えておいてやりたかった。


やっと家族の問題から避難できたセイを、
今度は私の愛人関係などという
えぐい下ネタで煩わせたりしたくなかった。


勿論スクーリングやテストの都合もあるので
セイをずっと長いこと東京におきっぱなしというわけにはいかないが…
でもこちらに一人で放置しておくわけにも…


「ふん、そーちゃんは、
私とのことより、セイタロくんが大切なんやね。」


「…スグルさん!
大人なんだから、責任てものがあることぐらい、
わかるでしょ?」


「ああそう。
じゃ、
そーちゃんは、私より責任が大事や、いうことで、いい?」


「…だから、」


「…会いたいのを、
ずっと我慢してるのは、私だけなんやね。
アホみたいやね、
わざわざ会える仕事作って回してみたりして。」


「…そんなことはないけど…
感謝はしていますし…
とても嬉しいけど…」


私は眉をひそめた。

…本山が、この男のことを
あまりたちのいいヤツではないと言っていたのを思い出した。


「…スグルさんなんか、奥さんいるのに、
浮気でしょ。
浮気どころか、
不倫でしょ?

誠意の欠片もないじゃない。」


「誠意!
誠意とかいうの、そーちゃん。
ひどい。

あんなにあなたに尽くしたでしょ?
これだけ仕事入ってるの、誰のおかげ?」


「仕事と不倫は関係ないでしょ。」


私ははっきり言った。


「私はそーちゃんに振り向いてほしくて
仕事餌につったんだもの、関係なくない。

…そんな事情なら話うけたりしなかった?
…それなら今からでも友達に声かけて、
別の人にまわしてもいいんですけど?」


…たちが悪い。
私はため息をついた。


「…ま、スグルさん、
とにもかくにも、
新作が出来てからだよね。

…とりあえず今はまだ一行もかいてないから。
とらぬ狸の話は、またね。」


「…いいよ。でもちゃんと考えといて。」


「…」


返事をせずに、私は電話を切った。

更新日:2009-08-01 10:40:13

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