廊下を渡り、部屋に戻った。

暗くなっていた部屋に、
西川がパチリと電気をつけると
蛍光灯は瞬いてから
青白い光で部屋を照らした。

すでに布団が敷かれていた。
古い布団に、真っ白なカバーがかかっていた。


…西川は部屋の様子など目に入っていない。
明らかに機嫌が悪かった。


「…スグルちゃん、
怖かったね、佐々木さんの話。」


私が話しかけると、
西川は、私がスグルちゃんと呼んだことに
急に気をよくしたようすで、振り向いた。


「…あのオッサンは半端ない。

…ね、今スグルちゃんて言うたね?」


「うん、言いましたよ。」


「…もう一回言って。」


西川はにこにこ近づいて、
猫がゴロゴロ懐くように
私の体に絡み付いた。


「…スグルちゃん。」


「んあー、幸せ。」


二人で布団に座り、背中や胸をそっと愛撫し合った。


「…そーちゃん、いやですよ、
あんなじいさんになびいたら。」


「なんでなびくの。
別に嫌いじゃないけど。
なびかない。」


「ほらー、嫌いじゃないとかいう。
あんなじいさんなのに!
すけべったらしー、
そーちゃんのこと、目で犯してるようなじじい。」


「気のせいですよ。」


「気のせいじゃないです。
あんた、もっと危機感もって!

いやや、そーちゃんがあんなじじいに
無理矢理犯されたりしたら。」


「…あなた、私が暴力的に犯される妄想するの、好きだよね。」


「…」


「…勃ってる?」


「…うるさい。」


「…無理矢理犯されるのって大変なんだから。
股関節はずれたりすんだから。
そういうの、カンベンしてくださいよ?
スグルちゃん。」


「私　は　し　ま　せ　ん。」


「…ならいいけど、妄想だけなら、別に。」


「私がそーちゃんのこと
そんなふうにするわけないでしょー。

可愛い私のそーちゃん、
こんな愛しくてたまらないのに…
アホですか?」


「…じゃあ、優しくしてね。」


私はそのままごろんと横になると、
片足を西川の肩に載せた。


「…そーちゃん、そのまえに、お風呂いかない?」


「やだ!
あの露天風呂、なんか怖いもの!
先に一発やりましょうよ。
…なぜかヤルと恐怖が消えるから。
そのあとゆっくり行きましょ?」


「…まあ、そーちゃんがそういうなら
仕方ない。

ていうか、そーちゃん、
この誘い方はないでしょ…?

浴衣で裾割って
足あげたりして…
はしたない…」


めくれた浴衣のすそから
西川の手が入り込んで、這い上がり、
ゆっくりと太腿を撫でまわした。