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西川とすこし世間話などしているうちに、
まだ独身なのかと聞かれた。
「独身ですよ。
今、親戚の子を預かってるから
当分独身。」
「親戚の子、…」
そこで西川にセイの境遇のことをあれこれと少し話した。
「…要するにそんなような
たらい回しにされてた
問題児らしいんですけど、
…うちではすごくいい子でしてね。
仲良く同居してますよ。
私が引きこもってるんじゃないかと
逆に心配されてるくらいなもので。」
「はぁ、
それは…多分、その子は先生が、
『ちょおどいい』んでしょおなあ。
邪魔にならないんでしょう。」
「…まぁ、別に特別かまったりもしないですからね。
飯を一緒に食って、
私が勝手に部屋や水場をそうじするくらいで。」
「不思議なもので、稀にそういう相手がいますなぁ。
私は兄弟がおりますが
仲が悪い。
自分以外の人間なんぞ
まっぴらだと思っとりましたが
不思議とじゃまにならん
ちょうどいい女に会いまして。
今の妻です。
むこうは私を
いつも邪魔だと言っております。」
西川はそういって
げらげら笑った。
私も笑った。
「…少し心配なんですよ。
そんな大変な…なにか問題を抱えている子を
わたしなんかがあずかって大丈夫なんだろうかと…
将来とかどうするきなんだろう、とか。
それを聞いてもいいのだろうか、とか。
何かしてやらなくて大丈夫なのだろうかと。
…一生あずかるわけにもいかない。」
「さようですな。
それはわかりませんな、
誰もわからん。
親もわからんかったんでしょう。
まあでも、邪魔になるまでおいてやったらよろしい。
先生と気が合いなさって、
その子も嬉しかったでしょう。
将来はともかく、今は
書生なり秘書なり
探偵助手なり
仕事しこむつもりでこき使われたら。
先生ご自身が、結婚に焦りだすまでは
預かってやってもよろしいのではないですかね?
結婚するときは、邪魔になるでしょうから、
親元に帰されたら。」
…その単純な考え方が、私は気に入った。
「…探偵助手ね。
コバヤシクンですか。」
「ゴバヤシクンですな。」
西川は陽気に笑って、
モヒートをもう一杯、頼んだ。
まだ独身なのかと聞かれた。
「独身ですよ。
今、親戚の子を預かってるから
当分独身。」
「親戚の子、…」
そこで西川にセイの境遇のことをあれこれと少し話した。
「…要するにそんなような
たらい回しにされてた
問題児らしいんですけど、
…うちではすごくいい子でしてね。
仲良く同居してますよ。
私が引きこもってるんじゃないかと
逆に心配されてるくらいなもので。」
「はぁ、
それは…多分、その子は先生が、
『ちょおどいい』んでしょおなあ。
邪魔にならないんでしょう。」
「…まぁ、別に特別かまったりもしないですからね。
飯を一緒に食って、
私が勝手に部屋や水場をそうじするくらいで。」
「不思議なもので、稀にそういう相手がいますなぁ。
私は兄弟がおりますが
仲が悪い。
自分以外の人間なんぞ
まっぴらだと思っとりましたが
不思議とじゃまにならん
ちょうどいい女に会いまして。
今の妻です。
むこうは私を
いつも邪魔だと言っております。」
西川はそういって
げらげら笑った。
私も笑った。
「…少し心配なんですよ。
そんな大変な…なにか問題を抱えている子を
わたしなんかがあずかって大丈夫なんだろうかと…
将来とかどうするきなんだろう、とか。
それを聞いてもいいのだろうか、とか。
何かしてやらなくて大丈夫なのだろうかと。
…一生あずかるわけにもいかない。」
「さようですな。
それはわかりませんな、
誰もわからん。
親もわからんかったんでしょう。
まあでも、邪魔になるまでおいてやったらよろしい。
先生と気が合いなさって、
その子も嬉しかったでしょう。
将来はともかく、今は
書生なり秘書なり
探偵助手なり
仕事しこむつもりでこき使われたら。
先生ご自身が、結婚に焦りだすまでは
預かってやってもよろしいのではないですかね?
結婚するときは、邪魔になるでしょうから、
親元に帰されたら。」
…その単純な考え方が、私は気に入った。
「…探偵助手ね。
コバヤシクンですか。」
「ゴバヤシクンですな。」
西川は陽気に笑って、
モヒートをもう一杯、頼んだ。
更新日:2009-07-21 13:04:02