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16 オッサンのコビト
日が暮れてから、食事風景を撮った。
こういうときは
まずくてもウマイといわなくては、と
思い、大変緊張したが、
意外と美味かったので、
素直に「おいしいですね」とにっこりできた。
じいさんは
「ウマイけど入れ歯ある人はきついだろうね。」
と意地悪く言った。
「入れ歯あるんですか。」
と思わずたずねると
周囲にいた連中が縮み上がったが、
本山本人はがっはっはと笑った。
「去年インプラントしたから今はねぇよ。
去年だったらきつかったなと思ってさ。
あんたも歳くったら
膝や腰が痛くなって
歯も髪も抜けるんだぜ。
染みやしわができて皮膚はたるんで腹もでる。
ああ、勿体ねぇな!
残酷だねぇ。
ヨーロッパの陶器のお人形みたいなのにさ。
たのむから一生そのままでいてくれよ。」
私は笑った。
「なーにいってんですか。
そういうことは10代の女優さんにでもどうぞ!」
「まあ、オレはあんたが爺ぃになる前に
死んじまうから見なくて済むけどね。
でもなんで今まで一度もテレビでなかったの?」
「本が売れたときは忙しくて…
寝てなかったくらいですし…」
「出版社からベストオブ何とかって
感謝状みたいなの2回もらったでしょ。
その表彰式もさ、テレビ局いれなかったよね?」
「そう…ですね。
でも別に断ってはいないですよ、私は。
そういう話が一切こなかっただけで。」
「えーっ、ウソでしょ。
気難しくて人前に出たがらない、
テレビ嫌いの人よくいるから、
てっきりそうなんだと思ってた。
本だって
おっかねぇきもちわりぃ内容だったしな。
絶対ガリガリに痩せて目のつり上がった
長身・眼鏡の
いけすかねぇ若僧だとお思ってたよ。
…ははぁ、じゃあ誰か
途中でハナシ握りつぶしてたな?
アイツじゃねーの?」
本山は笑ってそういって
西川を指し、そのあとおどけて
両手でカメラに向かってチョキチョキやった。
西川もニヤリと笑って
(カットにするだろうという前提だったのだろう)
「…あのときの葛原先生の担当は、××社の都筑ですよ。」
と答えた。
本山は「あーああ」という顔になった。
撮影スタッフがカメラをとめて
「…先生、困ります。」
と注意した。
私は思わぬ顛末に、少し動揺した。
こういうときは
まずくてもウマイといわなくては、と
思い、大変緊張したが、
意外と美味かったので、
素直に「おいしいですね」とにっこりできた。
じいさんは
「ウマイけど入れ歯ある人はきついだろうね。」
と意地悪く言った。
「入れ歯あるんですか。」
と思わずたずねると
周囲にいた連中が縮み上がったが、
本山本人はがっはっはと笑った。
「去年インプラントしたから今はねぇよ。
去年だったらきつかったなと思ってさ。
あんたも歳くったら
膝や腰が痛くなって
歯も髪も抜けるんだぜ。
染みやしわができて皮膚はたるんで腹もでる。
ああ、勿体ねぇな!
残酷だねぇ。
ヨーロッパの陶器のお人形みたいなのにさ。
たのむから一生そのままでいてくれよ。」
私は笑った。
「なーにいってんですか。
そういうことは10代の女優さんにでもどうぞ!」
「まあ、オレはあんたが爺ぃになる前に
死んじまうから見なくて済むけどね。
でもなんで今まで一度もテレビでなかったの?」
「本が売れたときは忙しくて…
寝てなかったくらいですし…」
「出版社からベストオブ何とかって
感謝状みたいなの2回もらったでしょ。
その表彰式もさ、テレビ局いれなかったよね?」
「そう…ですね。
でも別に断ってはいないですよ、私は。
そういう話が一切こなかっただけで。」
「えーっ、ウソでしょ。
気難しくて人前に出たがらない、
テレビ嫌いの人よくいるから、
てっきりそうなんだと思ってた。
本だって
おっかねぇきもちわりぃ内容だったしな。
絶対ガリガリに痩せて目のつり上がった
長身・眼鏡の
いけすかねぇ若僧だとお思ってたよ。
…ははぁ、じゃあ誰か
途中でハナシ握りつぶしてたな?
アイツじゃねーの?」
本山は笑ってそういって
西川を指し、そのあとおどけて
両手でカメラに向かってチョキチョキやった。
西川もニヤリと笑って
(カットにするだろうという前提だったのだろう)
「…あのときの葛原先生の担当は、××社の都筑ですよ。」
と答えた。
本山は「あーああ」という顔になった。
撮影スタッフがカメラをとめて
「…先生、困ります。」
と注意した。
私は思わぬ顛末に、少し動揺した。
更新日:2009-09-28 15:02:14