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翌朝早めに起きて
ホテルのビュッフェで食事をすませ
出かける支度をしていたら、
最初に西川がやってきた。

「ふふっ、
寝起きのそーちゃんやね。
髪くしゃくしゃ。」


「…ですよ。
おはようございます。」


「…かわい。
…ね、私のこと、スグルちゃんて呼んで。」


「…はずかしいです…」


「えー。いいでしょー。」



二人でイチャイチャしていたら
昨夜連絡があった通り、
メイクさんがやってきた。
なんと、服をもってきてくれていた。
その服に着替えて、
髪もやってもらって、
3人で集合場所へ行った。


例のおじいさんは
まだ来ていなかった。


少し待っている間、
西川は嬉しそうににこにこして
私の襟を直したりし、
合図があると、私の荷物を持って少し場所を移動した。


本山がやってきて、
挨拶から撮影が始まった。
本山は想像していたより
大柄な男で、
想像していたよりもさばさばしていた。

私は少し話してすぐに安心した。
怖がるような種類の相手ではなかった。
きちんとした人だった。

私の祖父ぐらい、といってもおかしくないほどの年齢だったが
矍鑠としているとでもいえばいいのか、
要するに健康で元気だった。
私を見てニコニコすると

「君があれを書いたの?
嘘だろ、信じられないよ、
オレの孫娘よりずっと控えめで
お淑やかじゃないか。

ホントにあんなおっかない本書くの?
君が?
へえ、怖い!

どんな話ができるか楽しみだね。
じゃあいこうか。」


とテキパキ仕切り、
そっと私の背中に手を当てて促し、
歩き出した。



…スタッフと西川がそろって
「してやったり」の顔になった。


更新日:2009-08-06 14:10:03

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