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14 ロマンスに修羅場に…その合間

姉夫婦から特に連絡はなかったが、
数日後、セイが
通帳をもってきて、見せてくれた。

…学費らしきものが振り込まれていた。

セイと話した。
10月くらいからなら、行けそうだと思う、
気持ちをそれまでにうまくもってくようにする、
とセイは言った。

私はいろんな学校に電話をかけて話をし、
定時制と通信制の資料をもらって
セイの部屋を訪れた。
セイは、あまりクラスメイトと付き合いたくないので、
通信制がいいと言った。
たまにスクーリングがあることも話したが、
その程度はかまわないと言った。


「…前の学校、いやなやつ多かったの?」


そうたずねると、セイは苦笑した。


「…別に、そんなんでもないよ。
ただ…オレは相性が悪かったみたい。」


「…苦手な人ばっかりってかんじ?
…先生とか?」


「ううん、普通の先生だったよ。
友達は…まあ、できなかったな。
あまり行かなかったしね。

…空気が悪くて…
息が出来なかった。」


…いやな雰囲気の学校で息が詰まった、
という意味に私は解釈した。


「まあ、そういう場所もあるよね。」


「うん…。
でもごめんね、そーさんに迷惑かけて…。」


「セイの役に立てたと思うし、私は嬉しい。
一人でいると、やっぱり退屈だしね。

思えば、東京いくときセイにケツ叩かれたおかげで
仕事も貰えたし。
セイがきてくれてから、毎日が楽しく変わったよ。
ごはんもセイと一緒に食べるとおいしい。」


…そのころわたしはなんだかんだで
雑文を書く仕事を
西川に紹介された人たちから
いくつかもらっていた。

ありがたいことに、
最初のエッセイが好評で、
なんとか使える、
という話になってくれたらしかった。


「…そーさんは優しいし、…。
いや、優しいよね。

…大好き。」


セイはぽつりと言った。
私は微笑んだ。


「私もセイのこと好きだよ。

優しいし、なに?」


そうたずねると、セイは苦笑した。


「…そーさんは…
なんていうか…

うまい。」


…以前にも誰かにそう言われたことがあったきがした。


「何が?」


更に聞くと、セイは困ったように頭をかいた。
そして言った。


「…かわすのが。」


何を?と更に聞いたが、
セイは笑っただけだった。


更新日:2009-07-27 16:08:38

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