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家の窓という窓を開け放ち、
風を通した。

暒太郎の話をきいて危惧していたキッチンは、
拍子抜けするほどきれいだった。
生ゴミもしっかり片付けてあった。

どこがどう汚かったんだろう、と私は首をひねった。

私がキッチンを離れて、
いつものように片付けをし、
掃除機をかけると、
セイが奇妙なことをし始めた。

シンクにキャンドルを置いて、
火を灯したのだ。

私がモップで水拭きをすると、
済んだ部屋から、
セイは香を炊き始めた。

…確かに少しお母さんの化粧品の匂いが残っていたが、
私もそれほどきにしていない程度だったので、
ちょっとこだわりすぎじゃないかな、と思った。

…まあ、だが、
私がいろんな人とどきどきわくわく面接したり
西川とアヴァンチュールしたりしていた間、
セイは3日も頑張ったのだ。
…今回は大目に見よう、と思った。


掃除が済んでも
台所のティーキャンドルは
まだ消えていなかった。


私は構わずに荷物をあけ、
洗濯物を洗濯機に放り込んでまわし、
いろいろな持ち物をかたずけ、
スーツケースをかぱっと全開にして、
少し太陽と風にさらした。


「…セイ、おみやげのお菓子たくさんあるよ。
食べられそう?」


声をかけると、セイはおずおず出て来た。


「…はい、これ、
西川さんがセイにって。
こっちは私が買ったよ。

無理しなくてもいいから、
そのうち食べられそうなとき食べて。」


「…ありがとう。
大丈夫、どこも悪くないよ。」


そういって、
セイがコーヒーをいれてくれた。


「…西川さん、元気だったでしょ?」


「…うん、元気だったよ。」


「…西川さんは、そーさんが大好きだからね。
そーさんがいれば、それだけで元気なんだよ。

…あのひと、奥さんとうまくいってないでしょ。
普通、休暇ならさ、
夫婦でくるよね、北海道。」


「…そうだね。」


…うまくいってない家庭の子供は
うまくいってない夫婦の気配がわかるらしかった。


キッチンのキャンドルは2時間燃え続け、
やがて燃え尽きて、自然に消えた。


更新日:2009-09-28 14:24:10

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