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13 ざっとこんなかんじ。
帰宅し、
初めてセイの母親と顔を合わせた。
セイの母親はおもったよりも小さな女性で
声は、怒鳴っているわけではなく、
ただ単純に、よく通る声質なだけであることがわかった。
…この細い女性が夫に殴られているのかと思うと
気の毒だとは思ったが
それでも私は彼女が好きになれなかった。
彼女はあたかも
私が彼女の息子を横取りしたかのように、
仇敵を見るような目で私を睨んだ。
そして疑い深い様子で
根掘り葉掘り、執拗に
私の履歴的なことを問いただした。
「…なんでそんなことを聞きたがるんですか。」
「そりゃあ、うちの暒太郎を預けているのですから!
あたりまえです。
美園さんの弟さんというから
もっと年配の方だと思っていたのに…
こんな、学生みたいな方だなんて!
まだ20代ですよね?」
彼女は憤慨してそう言った。
「暒太郎には通信の高校をすすめていただくように
一哉さんに言っておいたのに…
まったくお勉強させていないじゃありませんか!」
…美園が私の姉で、一哉がその夫だ。
「…私はそんなお話は一切うかがってません。」
…きいてたらもう少し安心して預かっていたはずだ。
「いわれなくったって考えるのが当たり前でしょう?!
きちんとした大人であれば
そういった配慮ができて当然ではないですか?!
暒太郎の将来をどう考えていらっしゃるんです?!
あなたみたいなお若い、何もわからない方に
息子をあずけるわけにはいきません!
それに…文筆家なんて…
お仕事もなさってないようなものでしょ?!
だいたい、ご結婚もなさっていないのだもの、
暒太郎の世話よりご自身のお世話が先ではないかしら。」
結婚はしてないしたしかに20代だ。
…何もわからないのは事実だし、
困っていた部分もないわけではなかった。
母親が息子を愛しているのはいいことだと思うし、
暴力的な夫の絶対的決定であったとあれば
こうして追いかけて我が子を取り戻そうとする姿は
けなげで美しくもある。
…とはいえ、
暒太郎がそっちの旦那の勝手な決定で
親戚をたらいまわしにされて、
姉の新婚家庭を邪魔したあげく、
ついにここへ来たという経緯を思い出すと、
この言い草には
さすがに私も腹がたった。
…いや、
それよりも、本当は
「このボーっとした女顔のチビになら勝てる」
という態度をあらわにしている彼女に対して、
一撃思い知らせておきたいという欲求が爆発した、というのが
事実だったのかもしれない。
私が意を決して目をあげると、
彼女はそれだけで少しひるんだ。
初めてセイの母親と顔を合わせた。
セイの母親はおもったよりも小さな女性で
声は、怒鳴っているわけではなく、
ただ単純に、よく通る声質なだけであることがわかった。
…この細い女性が夫に殴られているのかと思うと
気の毒だとは思ったが
それでも私は彼女が好きになれなかった。
彼女はあたかも
私が彼女の息子を横取りしたかのように、
仇敵を見るような目で私を睨んだ。
そして疑い深い様子で
根掘り葉掘り、執拗に
私の履歴的なことを問いただした。
「…なんでそんなことを聞きたがるんですか。」
「そりゃあ、うちの暒太郎を預けているのですから!
あたりまえです。
美園さんの弟さんというから
もっと年配の方だと思っていたのに…
こんな、学生みたいな方だなんて!
まだ20代ですよね?」
彼女は憤慨してそう言った。
「暒太郎には通信の高校をすすめていただくように
一哉さんに言っておいたのに…
まったくお勉強させていないじゃありませんか!」
…美園が私の姉で、一哉がその夫だ。
「…私はそんなお話は一切うかがってません。」
…きいてたらもう少し安心して預かっていたはずだ。
「いわれなくったって考えるのが当たり前でしょう?!
きちんとした大人であれば
そういった配慮ができて当然ではないですか?!
暒太郎の将来をどう考えていらっしゃるんです?!
あなたみたいなお若い、何もわからない方に
息子をあずけるわけにはいきません!
それに…文筆家なんて…
お仕事もなさってないようなものでしょ?!
だいたい、ご結婚もなさっていないのだもの、
暒太郎の世話よりご自身のお世話が先ではないかしら。」
結婚はしてないしたしかに20代だ。
…何もわからないのは事実だし、
困っていた部分もないわけではなかった。
母親が息子を愛しているのはいいことだと思うし、
暴力的な夫の絶対的決定であったとあれば
こうして追いかけて我が子を取り戻そうとする姿は
けなげで美しくもある。
…とはいえ、
暒太郎がそっちの旦那の勝手な決定で
親戚をたらいまわしにされて、
姉の新婚家庭を邪魔したあげく、
ついにここへ来たという経緯を思い出すと、
この言い草には
さすがに私も腹がたった。
…いや、
それよりも、本当は
「このボーっとした女顔のチビになら勝てる」
という態度をあらわにしている彼女に対して、
一撃思い知らせておきたいという欲求が爆発した、というのが
事実だったのかもしれない。
私が意を決して目をあげると、
彼女はそれだけで少しひるんだ。
更新日:2009-07-27 15:34:42