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2 モヒートを飲みながら

以前本をだしてもらったときに知り合った人物が
休暇で北海道へ来るというので、
札幌で会うことにした。


何故か私は
その西川という背の低い
関西人が好きだった。

西川はそれなりに標準語が喋れるが
ちょっとした発音の違いが出たり
言葉回しが若干奇妙になることは
しばしばあった。

私は彼のそういうところが
なんとなく不器用な感じで好きだった。

関西弁を嫌う人も多いが
私は漫才がすきで
関西弁を聞くだけでなんとなく顔が笑ってしまう。

西川さん関西弁で話せば良いのに、
と、私はよく言うのだが、
西川はその度に「いえいえいえいえ」と
手を振って笑い、遠慮するのだった。

彼いわく、東京語を必死で習得したために
関西弁が変になってしまったのだそうだが。

…もしかしたら東京に出たときに
辛い目にあったのかもしれない。


それはさておき
西川は背が低いところもいい。
私もそんなに高くないほうなので、
二人でいると
妙に落ち着いた。

向こうはというと
「先生おっとりしたお人ですよね」
と私を誤解していたが
休暇のときに飲みにさそってくれるくらいだ、
別に嫌いじゃないのだろう。


「セイ、私、今日
知り合いと飲むから、
自分でご飯食べなさい。

…どうする?
出前でもとるかい?」


私が言うと、暒太郎はびっくりした様子だった。


「そーさんて、飲むような友達いたの?!」


「…私一応、社会人なんだけど…。」


「それはしってるけどさ!
うん、いいよ、いっといで。
ゆっくり遊んでおいでよ!

オレの飯は心配しないで。
ドーナツ屋のパイか
バーガー屋のセットでも食べるよ。
たまにはファミレスにも行きたいし。」


「…そう?
じゃ、お金…」


「あ、大丈夫、
親父がふりこんでよこした金、
ちゃんと残してあるから。」


…どちらが保護者なのか
わからないのであった。

更新日:2009-07-21 12:58:21

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