- 32 / 218 ページ
11 私だってたまには…
ひとと肌を合わせるのは
都筑と別れて以来だった。
都筑は
しつこくて残酷な抱き方をする男だった。
何度か怪我をさせられたこともあった。
世間がどう思っているのかはしらないが
私が羽田から故郷へ逃げたときは、
大抵そんな夜が開けた朝であることが多かった。
…1冊目はともかく、2冊目以降になると、
書きかけの原稿には
私の人気の行方以上に
都筑のメンツがかかっていた。
だから都筑はいつも最後は仕方なく折れた。
私は都筑が普通に好きだったのだが
都筑は自分自身を嫌っていた。
だからそんな自分に愛が向けられる可能性は
はなから自分で握りつぶし、否定していた。
自分を愛せない人間は人を愛せないというけれど、
愛せないどころか愛されることさえできない。
いくら愛しても、その気持ちが届かない
都筑は不毛な相手だった。
でもいつかは都筑も私の気持ちをわかってくれるに違いないと
なぜか私はいつも
無邪気に信じていた。
あのころは、
書きかけの原稿が出来上がって
本が売れれば、
都筑はきっと喜んでくれて
私を顧みてくれるに違いないと思っていた。
原稿はできあがって本は出版されて
そのうちの数冊が幸運にも爆発的に当たって
…そしてその騒ぎがだいたい済むと、
私は都筑に捨てられた。
…だが正直なところ
捨てられて随分時がたった今でも
心のどこかでまだ…信じていた。
そんな気持ちでいながらどうして西川を誘うんだ、とか
よくも、西川を騙すような真似ができるものだ、とか
自分でも、少しは思った。
しかし、
愚かしくも未だに
都筑を慕ってる自分を感じながらも
私は、
都筑から嫌われている現実が
わかっていないわけではなかった。
…諦めたほうがいいのだ。
それなら、
愛してくれる相手にこっそり甘えてみるのも
一つのやり方だろうと思った。
都筑と別れて以来だった。
都筑は
しつこくて残酷な抱き方をする男だった。
何度か怪我をさせられたこともあった。
世間がどう思っているのかはしらないが
私が羽田から故郷へ逃げたときは、
大抵そんな夜が開けた朝であることが多かった。
…1冊目はともかく、2冊目以降になると、
書きかけの原稿には
私の人気の行方以上に
都筑のメンツがかかっていた。
だから都筑はいつも最後は仕方なく折れた。
私は都筑が普通に好きだったのだが
都筑は自分自身を嫌っていた。
だからそんな自分に愛が向けられる可能性は
はなから自分で握りつぶし、否定していた。
自分を愛せない人間は人を愛せないというけれど、
愛せないどころか愛されることさえできない。
いくら愛しても、その気持ちが届かない
都筑は不毛な相手だった。
でもいつかは都筑も私の気持ちをわかってくれるに違いないと
なぜか私はいつも
無邪気に信じていた。
あのころは、
書きかけの原稿が出来上がって
本が売れれば、
都筑はきっと喜んでくれて
私を顧みてくれるに違いないと思っていた。
原稿はできあがって本は出版されて
そのうちの数冊が幸運にも爆発的に当たって
…そしてその騒ぎがだいたい済むと、
私は都筑に捨てられた。
…だが正直なところ
捨てられて随分時がたった今でも
心のどこかでまだ…信じていた。
そんな気持ちでいながらどうして西川を誘うんだ、とか
よくも、西川を騙すような真似ができるものだ、とか
自分でも、少しは思った。
しかし、
愚かしくも未だに
都筑を慕ってる自分を感じながらも
私は、
都筑から嫌われている現実が
わかっていないわけではなかった。
…諦めたほうがいいのだ。
それなら、
愛してくれる相手にこっそり甘えてみるのも
一つのやり方だろうと思った。
更新日:2009-07-26 10:28:16