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私のからかいには答えずに、
都筑は逆に私に聞き返した。
「…親戚の子供なんかと暮らしてんの?」
「…親戚たらい回しにされて
我が家にきたんだけど、
居心地いいらしくて落ち着いてくれてます。」
「…親、死んだの?」
「生きてますよ。
でもうまくいってないみたい。」
「はた迷惑な。
あんただってそうそう金があるわけでもないだろうに。」
「その子の親が一応、
諸経費ふりこんでくれるんですよね。」
「…金ヅルかよ。」
「儲けにはならないですよ。
でも負担にもなってない。
…まあ、楽しく二人で遊び歩いてます。
自然のきれいなところとか。」
「おやまあ、あんたアウトドア系の適性あったのか。
意外だな。
地方都市のひ弱なアップタウンボーイかと思ってたよ。」
「…最近は交代で
ご飯つくってくれるようになって。
けっこう料理上手いんですよ。」
ウェイトレスが来て、無言でコーヒーを置いていった。
都筑は吸い殻を吸い殻入れに入れて、
私に返してよこした。
「…あげますから持ち歩きなさいよ、都筑さん。
私は吸わないし。」
「…吸わないのになんでこんなもん持ち歩く?」
「…都筑さんにいつ会ってもいいように。」
私がそう言うと、都筑は嫌悪感丸出しで私をみた。
私は笑った。
「…私は明日の便で帰るんですけど…
都筑さん、今夜は?
お時間とれないですか?
どうしても?」
「…前に言ったはずだ。
俺はもう金輪際
貴様にふりまわされるのは御免だからな。」
私は上目遣いに都筑を見て
口の端を上げた。
「…怖がっちゃって。
可愛いですね。」
…都筑はコーヒーを飲まずに、席を立った。
そして捨て台詞よろしく言った。
「…親戚の未成年食うなよ。恥知らずめが。」
「嫉妬ですか?その気があるならもう少しそれらしくなさったら。」
都筑は無視して出て行った。
私はため息をつき…
都筑が手をつけずに残したコーヒーを
代わりに飲んだ。
…香りの割に味はよくないモカハラー。
モカを頼む男は見栄っ張りのええかっこしいなんだと
10代のころかよっていたコーヒー屋の女将が
昔こっそり教えてくれた。
…都筑のそういうところも別に嫌いじゃなかった。
見た目はもうさんざんくたびれたおじさんだというのに
なかみはまだまだ
つっぱってる少年みたいで…。
だがこうも露骨に逃げられたというのは
やはり嫌われたのだろう。
今一つな味のコーヒーをすすりながら、
私は落ち込んだ。
不眠不休でベストセラーさずけてやったのに、
と、じんわり恨んだ。
都筑のことをウェイトレスに謝り、
会計を済ませた。
ウェイトレスは都筑に対しては怒っていただけだったが、
私に対しては怯えていた。
都筑は逆に私に聞き返した。
「…親戚の子供なんかと暮らしてんの?」
「…親戚たらい回しにされて
我が家にきたんだけど、
居心地いいらしくて落ち着いてくれてます。」
「…親、死んだの?」
「生きてますよ。
でもうまくいってないみたい。」
「はた迷惑な。
あんただってそうそう金があるわけでもないだろうに。」
「その子の親が一応、
諸経費ふりこんでくれるんですよね。」
「…金ヅルかよ。」
「儲けにはならないですよ。
でも負担にもなってない。
…まあ、楽しく二人で遊び歩いてます。
自然のきれいなところとか。」
「おやまあ、あんたアウトドア系の適性あったのか。
意外だな。
地方都市のひ弱なアップタウンボーイかと思ってたよ。」
「…最近は交代で
ご飯つくってくれるようになって。
けっこう料理上手いんですよ。」
ウェイトレスが来て、無言でコーヒーを置いていった。
都筑は吸い殻を吸い殻入れに入れて、
私に返してよこした。
「…あげますから持ち歩きなさいよ、都筑さん。
私は吸わないし。」
「…吸わないのになんでこんなもん持ち歩く?」
「…都筑さんにいつ会ってもいいように。」
私がそう言うと、都筑は嫌悪感丸出しで私をみた。
私は笑った。
「…私は明日の便で帰るんですけど…
都筑さん、今夜は?
お時間とれないですか?
どうしても?」
「…前に言ったはずだ。
俺はもう金輪際
貴様にふりまわされるのは御免だからな。」
私は上目遣いに都筑を見て
口の端を上げた。
「…怖がっちゃって。
可愛いですね。」
…都筑はコーヒーを飲まずに、席を立った。
そして捨て台詞よろしく言った。
「…親戚の未成年食うなよ。恥知らずめが。」
「嫉妬ですか?その気があるならもう少しそれらしくなさったら。」
都筑は無視して出て行った。
私はため息をつき…
都筑が手をつけずに残したコーヒーを
代わりに飲んだ。
…香りの割に味はよくないモカハラー。
モカを頼む男は見栄っ張りのええかっこしいなんだと
10代のころかよっていたコーヒー屋の女将が
昔こっそり教えてくれた。
…都筑のそういうところも別に嫌いじゃなかった。
見た目はもうさんざんくたびれたおじさんだというのに
なかみはまだまだ
つっぱってる少年みたいで…。
だがこうも露骨に逃げられたというのは
やはり嫌われたのだろう。
今一つな味のコーヒーをすすりながら、
私は落ち込んだ。
不眠不休でベストセラーさずけてやったのに、
と、じんわり恨んだ。
都筑のことをウェイトレスに謝り、
会計を済ませた。
ウェイトレスは都筑に対しては怒っていただけだったが、
私に対しては怯えていた。
更新日:2009-07-25 09:06:50