• 14 / 218 ページ
田舎道を15分ほど歩いただろうか。

田舎道とはいえ舗装されていて、
トラックがものすごいスピードでとばしていた。
おそらく、裏道として有名な道なのだろう。

天気はよく、
太陽が照りつけてじりじりと暑い。

たが、ときおり右手のほうから、
涼しいそよ風がふいてくるのだった。
木々のせいで見えないが
高い確率で、
右手は、川か沼地に違いなかった


「ここ、札幌市内?」

「そうだよ。」

「…札幌も意外に広いよね。」

「うん、田舎でしょ?」

「ああ。」


鬱蒼とした森…かと思いきや、
緑のなかに「営業中」の看板が現れた。

勝手知ったるの勢いで、セイはそこに入った。

引っ張られてついて行くと、広い駐車場のわきに
私の首丈あたりまで成長した大きなフキが生えていた。


「…そーさんたら。
入り口前で
フキにひっかかってるし。」


さらにひっぱられて
ついていくと、
古いユニークな形の建物のまえで、
セイは立ち止まり、私の手を放した。


「入るよ。ついてきてね。」


私がついて行くと、セイは先に入って、
お店の人とあいさつしていた。


「そーさん、
ジンギスカン、
食べ放題でなくていいよね。

…二人前でお願いします。」


チケットをもらった。


古びた店内を見回すと
(昭和風といったぬるいキッチュではなく
まともに古かった。)
…玉砂利を敷き詰めた地面のあちこちから
ゆっくりと蚊取り線香の煙が立ち上っていた。

…風流だ。


「待ち時間で庭を歩くんだよ。
沼のまわりをぐるっと一周まわれるんだ。

あ、虫よけ虫よけ。」


虫除けをシューっとかけられて、
団扇を渡された。


「ひとまわり40分くらいです。」


お店の奥さんがにこにこ教えてくれた。

…衝撃的な広さだ。
驚いた。

セイがまた私の手をつかんで引っ張った。
私は慌てて、外へ出た。


更新日:2009-09-28 12:38:28

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook