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4 なぜか西川。

結局私はそのあと3日ほど
水とドリンク剤だけで寝込んでいたのだが、
3日目の夕方、突然意外な人物に起こされた。


「…先生、ちょっと起きてください、
大丈夫ですか。」


目を開けると、
自称ちっさいおっさんの西川が
例の整ったな顔で覗き込んでいた。

…近くで見ると、すごくまつげが長かった。


「…あれ。なんで西川さん?」


「明日の朝早く発とうと思って、
さっきご挨拶に電話したら、
セイタロー君が出られて。」


そう言われて気がついた。
私は携帯電話を居間に置きっぱなしだった。


「熱出して寝込んでるというし、
セイタローくんはなんだか困っている様子でしたし。
地下鉄ですぐだと聞いて、
セイタローくんに迎えに来てもらいました。」


「わ…すみません…
別に、ただちょっと風邪ひいたんだと思うので
寝てただけなんですけど…」


私はあわててもぞもぞ起き上がった。
後ろにはセイがいて、じっとこっちを見ていた。
西川は私の額で熱をはかり、
体温計、スポーツドリンク、乾いたタオル、の順で
つぎつぎ私に手渡した。


「…3日目ですか?
明日下がってなかったら
一度病院ゆかれたほうがよろしいですよ。
タクシー呼んで。」


「はぁ、そうですね。」


「…体温計終わったら、
寝間着を替えましょうか。
どこです?」


私が部屋の隅の引き出しをさすと、
セイがぱっと動いて、下のほうの引き出しから、
替えのパジャマを引っ張り出した。
たいして汗はかいていなかったので
そういえば替えてなかった。


私が着替える間、
二人は部屋を出てくれた。


着替え終わると、
濡らしたタオルをセイがもってきて、
そっと額にのせてくれた。


「…そーさん、ごめんね、
オレ、なんか、なにもわかんなくて…」


「大丈夫だよ。
こういうのはスポーツドリンクのんで
寝てれば治るんだから。
人間の体はそういうふうに出来てるんだよ。
小さい子供は注意しなきゃいけないけど、
大人は大抵そんなもんだよ。」


「明日さがらなかったら、オレ病院ついてくよ。」


「…ありがと。」


西川が入って来た。


「先生、今、熱まだ39度ありますよ。
一回頭痛薬のんで熱下げませんか。
しんどいでしょ、あちこち痛いんではないですか?」



更新日:2009-09-28 11:52:46

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