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第一巻  必然の出会い


最近、周りの風景が歪んでるのが気になりながらも、目の調子が悪いのだと思いあまり気にしてなかった。

「どうした?具合でも悪いのか?」
「山科か・・・」
「山科かって、どうした」
「ん・・・最近、周りがゆらゆら・・・変だな」
「目眩か?病院行かなきゃ!脳の病気だったらどうするんだよ」
「そうだな・・・」

目眩でないことは分かっていた。
が、特に「そうじゃないんだ」とは言わず、山科との話を流した。


それから数日後、部屋で書き物をしていると部屋が歪みだした。

「なんだ?またか!」

そう言ってはみたものの部屋の一部分が黒く渦を巻きだした時には流石に身の危険を感じ立ち上がる。

けれど、俺にはどうする事も出来ず、その渦に巻き込まれていった。





雨上がりの草の匂い。
その匂いで、草の上にいるのだと気づいた。

目を開けると薄曇の空が目に入った。
体が動かない・・・横に向けようにも上手くいかない。

ここは何処だろう。
さっきまで部屋にいたはずなのに。
あの音は川が近い?鳥の鳴き声も聞こえる。
あの声は雲雀だ。けたたましく鳴いてる。
どこか近くに巣があるんだろう。

このまま誰にも気づかれず・・・気弱になってる俺。

ひずめの音?
確かにあれは馬だ!でも、なんで馬?
今時・・・近くで映画の撮影でもしてるのか?
あ・・・誰かが馬から降りてくる。
もうこうなったら誰でもいい!助けてくれ!!

足音が警戒してるようにも聞こえたが、だんだんと近づいてくる。

「おい!どうした?」

声を掛けてきたのは紛れも無く武将の格好をした同世代の男だった。

「おい、久綱!動けないみたいだぞ」

久綱と言う男が俺の顔を覗き込む。

・・・驚いた。

「山科!」
「山科?」

・・・違うのか?

「わしは立原久綱という者だ。こっちは山中鹿之助」

・・・山中鹿之助!あの有名な出雲の武将か!

頭が痛い・・・どうなってるんだ!
本物の武将なのか?そんな筈はない!

「・・・ここはどこですか」

二人は怪訝な顔で俺をまじまじと見る。

「ここは播磨だ」
「播磨?・・・兵庫県?」
「お前は自分が何処にいるのかも分からんのか?」
「わからない・・・何も分からないんです。どうしてここにいるのかも」

頭が割れそうに痛い。

「おい!大丈夫か!・・・久綱、こいつを城に連れて帰ろう」

一緒に来ていた他の武将は危険だと言ったが、久綱と鹿之助はそんな事はお構いなしに俺を抱き起こすと馬に乗せる。

馬に揺られながら頭の中は何が何やら分からず混乱する。
頭の痛みに耐えきれず意識が遠のいていく。

それからどの位意識を失っていたのか。
目を覚ました時には傍でほっそりとした青年が不安げに俺を見ていた。


更新日:2009-07-02 15:14:06

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