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謝辞~語られない背景~
『蛇』の残骸は八本の柱に受け止められ、大きく横たわっていた。
「凄い……」
思わずヴィーの口から声が出る。
柱の隙間は綺麗に流木によって埋められ、『蛇』の体を成していた土砂はその堰に見事に受け止められていた。
近づくと、恐ろしいほどの圧迫感がある。残骸とはいえ、村一つを飲み込んでしまうような『蛇』だ。朽ちてもなお存在感を持っている。
『蛇』を見下ろせる高台に登り、お弁当を広げた。
「……なぁ、ヴィー」
「え、なに?」
「サンキュー、な」
それだけ言うと、リンネルは無言になった。
――それが何に対しての『サンキュー』、なのか。
ヴィーは聞かなかった。
『何事も起きなかった』のだ。だから、リンネルはその責任を負う必要がない。
村の人に無駄な不安を感じさせる必要もないだろう。
レポートの概要をまとめ、引き上げる準備を始める。
そんな時、『蛇』の残骸を見上げていた一人が言った。
「それにしても、誰がこんな化け物を呼び出したのでしょうか」
少し考えて、ヴィーが返す。
「きっと、時間が経って封印が薄れてしまったんですよ。今の時代にこんな物を呼び出せる術士なんていませんから」
そう言ってリンネルに視線を送る。
「……そう、龍と一騎討ちで戦ってた時代ならまだしも、今は平和な現代ですしね」
困ったように笑って、リンネルが言った。
その肩に掛けた鞄の中には、魔剣が眠っている。
そう、ヒトが龍と一騎討ちで戦っていた時代の魔剣が。
「凄い……」
思わずヴィーの口から声が出る。
柱の隙間は綺麗に流木によって埋められ、『蛇』の体を成していた土砂はその堰に見事に受け止められていた。
近づくと、恐ろしいほどの圧迫感がある。残骸とはいえ、村一つを飲み込んでしまうような『蛇』だ。朽ちてもなお存在感を持っている。
『蛇』を見下ろせる高台に登り、お弁当を広げた。
「……なぁ、ヴィー」
「え、なに?」
「サンキュー、な」
それだけ言うと、リンネルは無言になった。
――それが何に対しての『サンキュー』、なのか。
ヴィーは聞かなかった。
『何事も起きなかった』のだ。だから、リンネルはその責任を負う必要がない。
村の人に無駄な不安を感じさせる必要もないだろう。
レポートの概要をまとめ、引き上げる準備を始める。
そんな時、『蛇』の残骸を見上げていた一人が言った。
「それにしても、誰がこんな化け物を呼び出したのでしょうか」
少し考えて、ヴィーが返す。
「きっと、時間が経って封印が薄れてしまったんですよ。今の時代にこんな物を呼び出せる術士なんていませんから」
そう言ってリンネルに視線を送る。
「……そう、龍と一騎討ちで戦ってた時代ならまだしも、今は平和な現代ですしね」
困ったように笑って、リンネルが言った。
その肩に掛けた鞄の中には、魔剣が眠っている。
そう、ヒトが龍と一騎討ちで戦っていた時代の魔剣が。
更新日:2010-04-30 12:19:22