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結論~conclusion~

ヴィーがゆっくりと目を開く。
視界の先には、茶色っぽい天井。

ぼんやりとした頭が徐々にはっきりとしてくる。
……と同時にヴィーは飛び起きる。
「村は!? みんなはどうなったの!?」
額の濡れタオルが、ぼとりと布団の上に落ちる。上体を起こしたヴィーを見て、隣でイスに座って本を読んでいたリンネルが顔を上げた。
「あ、起きたか」
その呑気な声で、理性が大分戻ってくる。見回せば、イザルニ村に来てから何度も見た、宿屋のいつもの部屋。そしてベッドの上で寝ていた自分。
「……夢?」
ヴィーは目をぱちくりする。
本を閉じながら、リンネルは笑った。
「いや、どうやら現実らしいぞ。おまえが『蛇』を止めたのはな。ほら、村長さんも来てくださってる」
リンネルの隣に目を向けると、村長が座っている。彼のヴィーを見る目は、なぜか尊敬……いや、それを超えて崇拝と呼べるほどの憧れと畏怖の色とを醸し出していた。
「……『蛇』? あぁ、そうだ。確か岩柱を立てて……」
ヴィーの記憶がだんだんと戻ってくる。

確かあの時、岩柱を立てたのだ。『蛇』を止めるために。

「おまえ、2日も目を覚まさなかったんだよ。その間に、村じゃ大騒ぎだ。まさか蛇飲みの童謡の話が現実に起きるなんて誰も思わなかったからな」
リンネルが、ヴィーのベッドに腰かけながら話す。
「まさか、『蛇』と同時に伝説の魔術士様まで村にいらしているとは、思いもしませんでした。あれほどの怪物を受け止める呪文など、歴史上の偉大な魔道士たちでも扱えるものではありません。本当に私はまだ夢を見ているのではないかと……」
村長は『蛇』を食い止めたヴィーの力に、伝説を重ねて見ているようだった。

「なぁ、その『蛇』の跡地を見に行かないか? おまえが受け止めたって場所で、そのまま止まっているんだ。あれは凄いぞ」
リンネルが提案する。
――あの呪文の効果、そしてこのイザルニの伝説を論文にまとめる上で、見に行くのは必要なことだ。しかし、そんな建前関係なしに、ヴィーはその風景を見たいと思った。
昔の人が伝説に残した、山を下る土の蛇とそれを受け止める魔術。
それが、どんな景色なのか。自分の魔術が、その中でどんな役割を果たしたのか。胸の奥が高鳴るのを感じる。
「行こう、リネン。面白そうだね」
「あぁ。そうと決まれば早速出発だ。弁当は途中で買って、『蛇』を見ながら食べようか」
まだ魔力の回復しきっていない体は節々が痛いけれど、そんなことは気にならないほどにヴィーはワクワクしていた。

ドアを開いて。
そして青空の下に出る。
イザルニ村の空気は今日もチリ一つなく澄んでいて、とっても綺麗だった。

更新日:2010-04-26 08:15:45

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