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第三章~童謡『蛇飲み』についての考察~
「リネン、いつまで寝てるの?」
そう聞こえたかと思うと、突然朝日が顔を照らす。
「う……。もう朝か」
寝ぼけ眼でベッドを降りる。窓際でヴィーがカーテンを開いていた。
「おまえは老人か。こんな朝早くから起きるなんて」
「リネンの起きるのが遅いだけだよ」
ヴィーはそう言うが、夏の日の出を拝むような時間帯に起きているこいつと俺、果たしてどちらの方が普通なのか。……いや、そりゃ健康的という意味ではヴィーの方が良いだろうが。
「ほら、早く準備して。出かけるよ」
ヴィーがバッグを手に取って言う。
「ん? あの古代呪文はどうなったんだよ」
「あー、あれ? 少し思い当たる所があってね。そこに今日は行こうと思うんだ」
ヴィーは楽しげにトン、と扉の前に立つ。
「悪いけど、俺は今日は行けないな」
「え?」
「俺の方もちょっと調べたい事があるから、一人で行ってくれるか?」
ヴィーがむくれる。どうせ、また遺物漁りの手伝いでもさせる気だったのだろう。
でも、今日は無理だ。昨日気付いた『あの事』を確認しに行かなくてはいけないから。
先に出発したヴィーを見送り、リンネルは机の上にエスタリア刀を出した。
――もしも、大蛇に捧げられたという『黒鉄』がエスタリア刀だとしたら。
これは武器ではなく、召喚のための供物ではないのか?
そう考えれば刃の無い剣も、手の込んだ装飾も納得がいく。
今日はその証拠を探しに行くのだ。
旅人が大蛇を呼び出したと言われる、ルニ山へ。
と、エスタリア刀の隣に小さな金属板が一つ。それは昨日今日とヴィーが頭を悩ませ続けている元凶の、あの古代呪文の板きれだった。
――ん? ヴィーの奴、忘れてったのか?
思いながらエスタリア刀に目を向けると、ふと衝動が湧きおこる。
「これ、ここに差し込んだらピッタリじゃないか?」
リンネルは思いつきに従うまま、金属板をエスタリア刀の柄の切れ込みに差し込んだ。
金属板は予想以上にぴたりと差さった。
……だが、何が起きるという訳でもない。
「ま、そりゃそうだよな」
リンネルはエスタリア刀を鞄にしまうと、日差し避けの帽子を浅めにかぶった。
そう聞こえたかと思うと、突然朝日が顔を照らす。
「う……。もう朝か」
寝ぼけ眼でベッドを降りる。窓際でヴィーがカーテンを開いていた。
「おまえは老人か。こんな朝早くから起きるなんて」
「リネンの起きるのが遅いだけだよ」
ヴィーはそう言うが、夏の日の出を拝むような時間帯に起きているこいつと俺、果たしてどちらの方が普通なのか。……いや、そりゃ健康的という意味ではヴィーの方が良いだろうが。
「ほら、早く準備して。出かけるよ」
ヴィーがバッグを手に取って言う。
「ん? あの古代呪文はどうなったんだよ」
「あー、あれ? 少し思い当たる所があってね。そこに今日は行こうと思うんだ」
ヴィーは楽しげにトン、と扉の前に立つ。
「悪いけど、俺は今日は行けないな」
「え?」
「俺の方もちょっと調べたい事があるから、一人で行ってくれるか?」
ヴィーがむくれる。どうせ、また遺物漁りの手伝いでもさせる気だったのだろう。
でも、今日は無理だ。昨日気付いた『あの事』を確認しに行かなくてはいけないから。
先に出発したヴィーを見送り、リンネルは机の上にエスタリア刀を出した。
――もしも、大蛇に捧げられたという『黒鉄』がエスタリア刀だとしたら。
これは武器ではなく、召喚のための供物ではないのか?
そう考えれば刃の無い剣も、手の込んだ装飾も納得がいく。
今日はその証拠を探しに行くのだ。
旅人が大蛇を呼び出したと言われる、ルニ山へ。
と、エスタリア刀の隣に小さな金属板が一つ。それは昨日今日とヴィーが頭を悩ませ続けている元凶の、あの古代呪文の板きれだった。
――ん? ヴィーの奴、忘れてったのか?
思いながらエスタリア刀に目を向けると、ふと衝動が湧きおこる。
「これ、ここに差し込んだらピッタリじゃないか?」
リンネルは思いつきに従うまま、金属板をエスタリア刀の柄の切れ込みに差し込んだ。
金属板は予想以上にぴたりと差さった。
……だが、何が起きるという訳でもない。
「ま、そりゃそうだよな」
リンネルはエスタリア刀を鞄にしまうと、日差し避けの帽子を浅めにかぶった。
更新日:2010-04-26 09:10:50