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第二章~イザルニ村英雄伝説について~

――翌朝。
ドン、という重い衝撃音で目が覚めた。
なんだなんだ、と動揺したが、それも一瞬の事。どうせヴィーがいつものように術の実験をしているんだろう。あの程度の音なら大した被害も出ていないし、謝れば済む程度の事だ。
ゆっくりと服を着替え、顔を洗う。

表に出ると、ヴィーが何やら呪文を唱えていた。
そして軽く杖の先で地面を叩くと……
ドン、という衝撃音と共に地面から水が噴き出す。

「な、なんだ……?」
リンネルが訳も分からずその光景を眺めていると、こちらに気づいたヴィーが飛びついてきた。
「リネン、成功したよ! 呪文が……復元できた」
「あの、地面から水が噴き出すのがそうなのか?」
「うん。昨日見つけた術具の破片に描いてあった図形を推定の材料にしてみたんだけど、大当たりだった!」
「あんな板きれが役に立つもんなのか」
「術具の模様は重要だよ。ただの飾りに見えるかもしれないけど、あれが魔力の流れをコントロールしてるんだから」
興奮しているヴィーだったが、リンネルは気になっていることが一つ。
「……で、それは何に使う呪文なんだ?」
数秒の沈黙。その後に真顔に戻ったヴィーが答えた。
「……さぁ?」
「おい!」

更新日:2010-04-24 20:53:06

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