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3-5/喫茶店で


 俺と華子とコアリ(件のミナミコアリクイに擬態していた宇宙人女児の名前)は、学校の近くにある喫茶店で優雅なティータイムとは程遠い時間を過ごしていた。
 華子の姿は俺とコアリにしか見えていない。つまるところ俺はこの冷たい目をした見知らぬ女児と、二人っきりで喫茶店にいると言うわけだ。
 ……うわぁい、超危ねぇ。お願い、近くに座ってる人。あとさっきからこっちを見てる店員さん。俺、何もしませんからくれぐれも通報とかしないで下さい。ホントマジお願いします。前科一犯がつくよりも、その罪状が女児誘拐とかだけは絶対にご免被りたい。

「オイ、タロー。」
「太郎さんと呼べ。女児に呼び捨てられる筋合いは無い。」
「……血の繋がらないおにーちゃん、と大声で呼んでやろうか?」
「タローと呼んでくださいお願いしますゴメンナサイ。」

 テーブルに頭をくっつけて土下座紛いな事をする俺。弱ぇー。
 く……どう考えても主導権はこの自称宇宙人だ。どうにかしてこの状況を打開しないと……。

「あのー。主導権云々はどうでもいいですから、さっさと話を進めませんか?」
「華子は黙っていろ。これは俺のプライドの問題だ。いいかコアリ、最初に言っておくが俺はお前の命令は絶対に聞かないからな。」
「そう冷たい事を言うな、お兄ちゃん。」
「んな可愛げのねー妹なんか要らねーよ!!」
「きゅー!」
「くはぁ……!」
「太郎さん! 鼻血がっ! 滝のようにッ!!」

 くそぉ……! 「きゅー!」は反則だ、反則過ぎる……! レッドカード11枚分にも匹敵する大反則だ! フィールド上から俺のサムライジャパンが一瞬で消滅してしまう! 伊達にミナミコアリクイに擬態していなかったという事なのか……! クールでムカつくだけのキャラかと思えば唐突にコレだッ……!
 お陰で注文したメロンソーダが真っ赤になってしまった。何、この地獄名物みたいな飲み物。

「アッハ。地球人は愉快だなぁ。」
「もういいよもう……。で、華子。なんだっけコイツ。迷子なんだって?」
「うむ。コアリは迷子だ。」

 華子に問うたのに、華子より先に口を開いたのはコアリだった。

「早急に家に帰りたいが、帰り方が解らぬ。ミナミコアリクイに擬態してあの学校で華子さんに匿ってもらっていたが、日曜日には食料調達のアテもない。このままでは餓死を禁じえぬ。そういうわけだから、手を貸してくれ地球人。」
「華子だけはさん付けなのな。」
「タイトルもさん付けだから、それに倣ってみた。」
「お前の親の顔が見てみたいぜ。」

 ……なんか疎外感を感じまくりな俺なのであった。
 手を貸せと言われても、俺に出来るのはこうして喫茶店でたかられる事くらいだ。先月家をぶっ壊してしまったお陰で今年は小遣いなんてびた一文も貰えるアテが無いし、バイトでもしないとやっていけないかも知れないなぁ……。

「まぁ、そう不安がるでない。今頃パパとママも、コアリを探して動き出している頃だろう。早くしないと極東の島国が一つくらい滅ぼされるかも知れないがな。ハ、ハ、ハ。」
「笑い事じゃねーよッ!! 極東の島国とかピンポイントじゃねーか! 電話とか無いのか!?」

更新日:2009-06-23 00:34:25

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はなこさんと/第三話「えいりあんと」