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3-2/司令室で


 そういうわけで今回は主人公である俺様、太郎が実況解説的モノローグによってちょっとメタっぽい視点からこのアホみたいな話の冒頭を終えてきたわけであるが、どうして唐突にこんなスタイルになったのかは俺にも解らない。作品ごとにスタイルを変えるのがあの阿呆――こと、この作品の作者の習慣なのでもしかしたら「はなこさんと」に相応しいスタイルを今更ながらに模索し始めているのかも知れない。
 どうせこの第三話でさえ、まともに公開されるかどうかも謎なのにな。ご苦労なことである。
 さて、舞台は東京都庁のどこかに位置している秘密の部屋。
 今頃、俺は学校で授業を受けつつ夢見がちになっている時間だと思うがそんな事はさて置き、俺はその部屋を見ても、其処が都庁の中であるとは微塵も思わないだろう。
 何故なら、それはどう見てもアレなのだ。特撮戦隊ヒーローモノで必ずと言っていいほど出てくる、何となく青系統の光源が多い司令室的な様相に酷似した――と言うかまさに司令室そのものだったのだから。
 その部屋の、多分一番偉い人が座るんだろうなぁ、的な場所に座していたのは、我らが東京都知事、岩原。下の名前は失念した。まぁ、今回は他に岩原なんて名前の人間は出てこないから、ずっと苗字で呼ばせていただくことにしよう。何より他の登場人物も、全員彼をファーストネームでは呼ばないしな。

「都知事。これを。」

 一見するとSPか何かのように見える黒服の屈強な男が、一冊のファイルを黒塗りのテーブルに置いて言う。SPとはセキュリティポリスの略だ。揃って背の高いイメージがあるがまさにその通りで、SPになるためにはある程度の身長も必須条件である事は意外と知られていない――と言うのは余談である。どうにも今回は脱線が多いな……非常に申し訳ない。
 テーブルに置かれたファイルは、青白いライトに照らされていた。とても一般人には触れることが憚られるような、明らかに“普通ではない”雰囲気を感じさせるファイルであった。そこにぬっと手を伸ばした、鼻から下に白い髭を蓄えた厳格そうな男こそ――岩原だ。

「岩原君。よもや、事態は一刻の猶予も無いのだよ。」
「…………。」

 SP風の男の後ろには、さらに別のSP二人に挟まれるように、お世辞にもいい体型とは言えない――ぶっちゃけよく肥えた中年の男が立っていた。きっと甘い蜜を吸い過ぎた結果がそれなのだろう。岩原はその突き出た腹をジロリと睨みつけ、心の中に嫌悪感を抱いた。

「……政府は、これがいかに危険な判断であるのかを、理解していないとお見受けする。」
「そういう岩原君は、まだ連中の脅威を理解していないのではないのかね?」
「宣戦布告を受けたわけでも無いでしょう。それとも、彼らに居座られると何か不都合でもあると仰るのですか?」
「…………。」

 突き刺すような鋭い視線が、中年の男の言葉を詰まらせる。
 岩原は都知事になる前から知っていた。この国が、何処まで腐ろうとしているのかを。そしてその根源は全て、か弱き人民から税を搾取する官僚の暴慢にある事を。
 腐った果実は、早めに斬り捨てなければなるまい。しかし、所詮は都知事に過ぎない自分に、内閣をも動かすほどの力はまだ無い。あるのは――この国そのものを滅ぼす程度の、とても気軽には扱えない大き過ぎる力だけだった。

更新日:2009-06-23 00:15:07

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はなこさんと/第三話「えいりあんと」