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3-8/海の底で


「ナ、ナンナンダ、貴様ハ……本当ニ人間カッ……!?」
「わしがファミリースマート店長、横縞平八郎であるッ!!」
「ブゲラァーーーッ!!」

 地上を襲っていた月の侵略兵器の、最後の一機が無様な悲鳴を上げてコアを潰され、その機能を停止した。
 しかし、その兵器を別の場所から操縦していた月の従者は、決して生身の人間に敗北した事を恥じる必要は無い。相手が悪かった。ただそれだけのことなのだ。

「店長! 侵略兵器に捕まっていた人たちも全員無事です!」
「そうか。よし、全員を連れて早急にこの場を離れろ!」
「で、でも店長は……!」
「わしはこの店と共に死ぬと決めておるのだ! だが、ただでは死なぬぞ、あと何百機でも連れて来るがいい宇宙人め。わしが死ぬまで、何機でも撃墜してくれるわッ、わしが横縞じゃーーッ!! ワハハハハハハッ!!」

 地上の戦いはほぼ終焉を迎えていた。
 元より宇宙人の側に、本当に地上を征服する気が無かったと言うのもその原因かも知れないが、何よりも彼らが最初に、このカオスな町を標的と定めた事が最大の敗因であったと思う。月の軍勢の残る勢力は、ムーンライトただ一機であった。しかし、その一機は先ほどまで地上を蹂躙していた小型侵略兵器の何千機分にも相当するパワーがある。これを破壊出来ない限り、人類の敗北は決定的であった。
 ――内閣。

「――総理! アメリカ国防総省から、今回の事態に関する説明をしろと……!」
「捨て置けェ! これは我が国の問題だッ! 何時までも五月蝿いようなら、無粋な真似をするなと伝えろッ!!」

 ――皇居。

「……本当に良いのですか。避難されなくても。」
「えぇ。良いのです。民が戦っている……そこに並ぶ事が出来なくとも、その後ろで祈る事は出来る……此処から逃げない事が、我々の戦いなのです。」

 ――世界中が、この異常事態に気付き始めていた。
 宇宙人の侵略。そして、日本の底力――都庁ロボ。これを引き金に、第三次世界大戦でも起こそうと言うのか。各国の緊張が高まる中、総理も、天皇も、一人の少年の勇気を信じて沈黙していた。
 東京湾に消えた都庁ロボ。しかし、まだ敗北が決まったわけではない。きっと彼らは帰ってくる。何度倒されても蘇り、そして必ずムーンライトを打ち破ってくれる。何故なら、こんなにも彼らの勝利を信じている者がいるからだ……!
 ――東京湾、深海。都庁ロボは左半身を大きく歪ませた状態で、海底に横たわっていた。
 執務室の罅割れたスクリーンには、砂嵐しか映っていない。他の照明は全て消え、太郎とコアリは椅子に腰掛けたまま項垂れていた。
 凄まじい衝撃だった。シートベルトをしていなければ、この部屋の中をスーパーボールみたいに跳ね回る事になっていたかも知れない。太郎が意識を取り戻した時にはまだ、コアリは気を失ったままであった。

更新日:2009-06-23 01:48:45

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はなこさんと/第三話「えいりあんと」