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出発

「ジャッキー、どーしたの?」
ジャッキーがぼーっとした顔で遅い朝食を食べていると、ロイがどすんと横に腰を下ろしてきた。あぁ、面倒くさいとおもいながらも今日は言い返す元気がない
今日もこの酒場は大賑わいだ。昨日のできごとの速報を聞きたい人たちが集まっている。というか、武勇伝を何回も何回も聞きたい人たちが集まっていると言ったほうが正しいかもしれない
「ジャッキー、そこのにーちゃんも来たことだし、昨日の話をもう一回頼むよ」
何百回も話したような気がするが、言ってもはじまらないので簡略にのべる
「リリンの元彼氏が来て、大暴れして行ったのよ」
「ジャッキー、お前が追い払ったんだろ?」
客たちがはやし立てる
「お金を持ち逃げしようとしたり、爆弾持ち出したりで大変だったんだから」
ジャッキーはカウンターにひじをついて上半身だけひねると、もう少し説明を加える
「とりあえずお金は死守したし、爆弾も店外にほうりだしたけど店内はめちゃめちゃよ。おかげでリリンは居場所バレちゃったしもうここにいれないって出て行くし、リリンを無事に逃がしてそいつを追い払いうのに精一杯だったわ」
とりあえずそういうことにしておいた。
今更リリンが泥棒だったことを言っても彼女を気に入っていたおやじさんや客たちが悲しく思うだけで何も得るものはない。幸いにも爆発でけが人もでず、道路の真ん中に穴があいた他は周りにあったものが倒れただけですんだ。実質、損害はロイの財布だけですんだけれど、それが思わぬほど高価だったことにに少し心が痛んだ
「ジャッキー、お疲れ様。お手柄じゃないか~」
ロイがにっこりと笑うが、ジャッキーは浮かない顔のままだ
「僕の財布のことなら大丈夫だよ。これからもなんとかなるから」
「そうじゃないわよ。リリンがこの村に来た理由がよくわから――」
ジャッキーはびっくりして言葉の途中で止まった
「え? 何て?」
ロイは相変わらずの無邪気な笑顔を浮かべて肩をすくめた
「だから、あの財布の中身もICチップもリリンが言ってたほどたいしたものじゃ無いからさ。気にしないでよ」
ジャッキーは穴があくほどロイを見つめた
「あんた見てたの?」
ロイはにっこり笑った
「と、いうか聞いてたの」
ロイは首に巻いているバンダナをくるりとまわして結び目を見せた。そこにはきらきらした四角い形のバンダナ留めが半分隠れるようにとめてある

更新日:2009-07-24 14:58:52

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