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「傾斜地の町並み」


穀倉地帯の遥か遠く、地平線と空が交わる境目あたりにかすかに海が見えている。
 
この国では、今世紀の始め頃に行われた改革により、都市を傾斜地に移し、全ての平野で大規模な穀物生産体制が採られる様になった。
 
乗り物が発達し、交通手段が多様化した世の中で、平地に人が住む必要性を否定し、傾斜地に住む利点を高らかに掲げた政策だったが、食料自給率向上をにらんだ農業の効率化が目的だったようだ。
 
確かに、津波対策や上下水道の事を考えると傾斜地は理想と言えるのだが・・・・・。
 
巨大地震が発生したときに、津波による人的被害が極端に少なかったことも、政策のおかげと言えばおかげ・・・・・・。
 
世界的な食料不足に備える政策で、食料自給率40%程度しかなかったこの国が、目標とした100%以上を達成している。
 
今世紀初頭の、政治家や専門家と言われる人達は、この国で食料自給率100%は絶対不可能だと諦めていたはずだったが。
 
どのような世の中になっても、問題は次々と発生してくるようだ。

更新日:2008-12-04 01:50:13

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