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霊なんか見たくない!

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次の話は、私の友人を紹介します。
その友人は、とても霊力というか霊感みたいなのが強いんです。
どこに行っても霊が見えるといいます。

子供の頃などは霊と遊んだ記憶もあるそうです。
一番古い記憶はまだ3歳位のとき、お母さんが買い物に行くので
ちょっとの間だけ、一人で留守番をしていたそうです。
マンションのドアには鍵が掛けられていて、子供の自分は解除の
方法など知らなかったみたいです。

ほんの短い間に霊は鍵を開けて(?)、あるいは通り抜けて、かも
しれませんが入ってきました。
何の遊びや話をしたかは覚えてないみたいなんですが、母親が帰って
くるとスグに消えたそうです。
あまりに、いい子にしていたので母親が誉めたら「知らない人と
遊んでた」と言ったそうです。

その後も親に連れられ、町などに出ると明らかに、この世のものでは
ない『人』を何度も見、その都度親に言ってらしいです。
強烈は記憶は子供の頃、可愛がってくれたお祖母ちゃんが亡くなり、
親戚が集まる田舎に行った時です。
友人は、まだ子供だったので出席せず親の実家近くの田んぼ(もう刈り
取った後なので草しか生えてません)で一人で遊んでいたそうです。

そこに亡くなったはずの、お祖母ちゃんが来たんです。
親に呼ばれるまで、ずっと遊んでくれたそうです。
いい話ですよね。

さて本題です。
その友人も大学内でちょっとした有名人でした。
とは言っても見えるのは本人ばかりなので、他の人から見れば
嘘つきに思われただろうし、女の子は気味悪がっていたはずです。

冬になって、みんなでスキーに行くことになりました。
安い民宿に泊まっての旅行です。
夕食も終わって、皆で布団を並べて寝ます。
一人が言いました。
「そういえば、竹下。お前、霊が見えるんだよなー?」
「ああ、見えるよ」
「この部屋にもいるのか?」
「この部屋?んー…いや、いないね」
「なら良かった。ところで霊だけど、お前には見えるけど俺達には
見えないんだよな。他人に見せたり出来ないの?」

私は、いやーな予感がしてきました。
ラジオ局のバイト以降、結構身の回りで変なものを見聞きします。
まさか旅行にまで来て、怖い思いはしたくなかったので布団を被って
寝たふりを決めました。

「出来るけど、見たいの?」と言うではありませんか。
「ああ、一度、そういうの見てみたいよ。なあ」
「俺、結構ホラー映画とか見てるから、全然びびらないぜ」
「おおっ。見せろ、見せろ」
全部で6人で泊まったのですが私と竹下君以外は全員盛り上がって
いました。

「…前島君は寝てるね」
私は返事をしませんでした。
「でもこの部屋には霊はいないんだっけ?」
皆で部屋から出て霊を見に行くというなら、それはそれで歓迎です。
でも違ってました。
「人の霊じゃなくていいの?」
竹下君の言った意味が分かりませんでした。

「人じゃないなら、何の霊を見せてくれんの?」
「うん…待ってて。電気、消すね」
竹下君は立ちあがってスイッチを切ったようです。
真っ暗になったのが、布団の中からでも分かります。

「みんな、目を瞑って。いいって言ったら目を開けてよ」
「分かった」
静かになりました。皆、目も口も閉じたようです。

「…いいよ」竹下君は言いました。

「うわーっ!!」
「う、嘘だろっ!」
「分かった!もういい!もういい!」
一斉に叫び声が上がりました。
私は見ませんでした。でも次の日に聞きたくないのに友人の一人が
私に話してくれました。

「昨日さ、竹下が霊を見せたんだ」
「霊?」
「ああ、部屋の天井いっぱいに大きいのやら小さいのやら、ぎっしりと
猫の顔だらけだった」と、言うんです。

猫は大好きですが、やっぱり見なくて良かったと思いました。
危うく大好きな猫が嫌いになるところでした。

更新日:2009-06-13 09:39:40

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