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夜、走るとき…続き
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次も怖い話しじゃないです。
事故、というか事件…かな?
若い方はご存知無いと思いますが、田舎の方には簡素な作りの火葬場(家)
みたいなのがあります。
子供だった私は、その小さな家が何の為に建っているのか知りませんでした。
想像しづらいと思いますが、まさに小屋みたいなもんです。
私が中学に上がる頃には、校舎の隣に大きな火葬場が出来ました。
でも小屋は壊されること無く、ずっと放置されていました。
関係ないですが隣に出来た火葬場は日中、授業中でも火葬しているので、
その煙(匂い)が教室に入ってきたのを覚えています。
その匂いは何とも表現し難く、嫌な匂いでした。
(あー、人を焼くと、こんな匂いがするんだ)などと思っていました。
本題に入ります。
その小さな火葬の小屋は、壁も土壁で窓なども無く、中には人を焼く為の
大きな釜?いえ、アレは何でしょう?錆びた鉄製の窯(かまです。読みは
同じです)みたいなのが、あるだけ。
焼き終わるまで待つ、待合所なんてものもありません。
あとは…そうですね。焼く為の燃料ですか?そういうものを置くスペースは
あったと記憶しています。
普段は木製のドアに閂(かんぬき)が掛けられ、鍵も付いています。
どうして私が、この小屋の内部を知っているのか、これからお話します。
その夜も、いつものように走っていました。
緩やかな上り道を抜け、いつものトンネルに入りました。
さっき話した『小屋』は、このトンネルを抜けたすぐ脇にあります。
10数メートル位しか離れていません。
真っ暗なトンネルに入ると軽く眩暈(めまい)がしました。
たぶん光に頼っていた道から、いきなり上下左右の見分けがつかない
ような暗闇に入り込んだので、そう感じただけだろうと思いました。
でも今までに、そういう事はなかったんです。
倒れる程ではなかったと思いますが、とにかくフラついていました。
トンネルの中を右に左に、蛇行しながら走っていたはずです。
都会だったら大変です。でも、ここは車がまったく走らない田舎道。
道の真中で寝っ転がっていても平気です。
逆をいえば、倒れても誰にも気付かれずにそのまま放置、という事
ではありますけど。
いつ自分がトンネルを出たのか全く気づきませんでした。
ただ導かれるように、あっちにフラフラ…こっちにフラフラ走って
いました。
いや、もう走っているというより歩いていた、という方が近かった
でしょう。
ドスンと音がして身体が何かに激突したんです。
「ん?…何かにぶつかった」
我に返って懸命に目を凝らして辺りを見回しました。
おかしな事にトンネルを出たはずなのに、一向に光を感じません。
「まだ…トンネルの中?いや、そんな筈はないよ」
両手を伸ばすと何かに触れることが出来ます。
もう、お分かりでしょう?
私は、火葬小屋の中に入ってしまったんです。
後ろを振り返ると僅かに光を感じ、そこがドアだという事がわかり
慌てて戻りました。
「なぜ、ドアが開いていたんだろう?いつもは鍵がかかっているのに」
つまり私はフラつく足取りでトンネルを出た後、90度右に曲がって
小屋に入ったことになります。
「…なんか、今日は眩暈がしてたからなー…もう帰ろうかな」
などと思いながら小屋の中をもう一度、目を凝らして見てみました。
やはり内部は暗く、何も見えません。
でも調度その時、後ろをヘッドライトを点けた(当たり前ですが)車が通り
抜けました。
その時、全部見えたんです!中が。
お化けなんかいませんよ。
でも見たんです。
あの大きな窯の蓋が開いて口を開けているのを。
もし、あの時…もう少し勢いがあったら私は窯の中に入っていた、
という事になるんですね。
別にそれだけで、どうという事はないんですけど。
焼かれる訳でもありませんし、窯から出れなくなるという事もありません。
単なる偶発的な出来事です。
鍵を閉め忘れて、風でドアが開いた。たぶん窯の蓋は衛生上(?)の理由
で開けてあるんでしょうね。
たまたま、そこへ私が小屋に入ってしまった。
それだけです。
それだけのことです。
次も怖い話しじゃないです。
事故、というか事件…かな?
若い方はご存知無いと思いますが、田舎の方には簡素な作りの火葬場(家)
みたいなのがあります。
子供だった私は、その小さな家が何の為に建っているのか知りませんでした。
想像しづらいと思いますが、まさに小屋みたいなもんです。
私が中学に上がる頃には、校舎の隣に大きな火葬場が出来ました。
でも小屋は壊されること無く、ずっと放置されていました。
関係ないですが隣に出来た火葬場は日中、授業中でも火葬しているので、
その煙(匂い)が教室に入ってきたのを覚えています。
その匂いは何とも表現し難く、嫌な匂いでした。
(あー、人を焼くと、こんな匂いがするんだ)などと思っていました。
本題に入ります。
その小さな火葬の小屋は、壁も土壁で窓なども無く、中には人を焼く為の
大きな釜?いえ、アレは何でしょう?錆びた鉄製の窯(かまです。読みは
同じです)みたいなのが、あるだけ。
焼き終わるまで待つ、待合所なんてものもありません。
あとは…そうですね。焼く為の燃料ですか?そういうものを置くスペースは
あったと記憶しています。
普段は木製のドアに閂(かんぬき)が掛けられ、鍵も付いています。
どうして私が、この小屋の内部を知っているのか、これからお話します。
その夜も、いつものように走っていました。
緩やかな上り道を抜け、いつものトンネルに入りました。
さっき話した『小屋』は、このトンネルを抜けたすぐ脇にあります。
10数メートル位しか離れていません。
真っ暗なトンネルに入ると軽く眩暈(めまい)がしました。
たぶん光に頼っていた道から、いきなり上下左右の見分けがつかない
ような暗闇に入り込んだので、そう感じただけだろうと思いました。
でも今までに、そういう事はなかったんです。
倒れる程ではなかったと思いますが、とにかくフラついていました。
トンネルの中を右に左に、蛇行しながら走っていたはずです。
都会だったら大変です。でも、ここは車がまったく走らない田舎道。
道の真中で寝っ転がっていても平気です。
逆をいえば、倒れても誰にも気付かれずにそのまま放置、という事
ではありますけど。
いつ自分がトンネルを出たのか全く気づきませんでした。
ただ導かれるように、あっちにフラフラ…こっちにフラフラ走って
いました。
いや、もう走っているというより歩いていた、という方が近かった
でしょう。
ドスンと音がして身体が何かに激突したんです。
「ん?…何かにぶつかった」
我に返って懸命に目を凝らして辺りを見回しました。
おかしな事にトンネルを出たはずなのに、一向に光を感じません。
「まだ…トンネルの中?いや、そんな筈はないよ」
両手を伸ばすと何かに触れることが出来ます。
もう、お分かりでしょう?
私は、火葬小屋の中に入ってしまったんです。
後ろを振り返ると僅かに光を感じ、そこがドアだという事がわかり
慌てて戻りました。
「なぜ、ドアが開いていたんだろう?いつもは鍵がかかっているのに」
つまり私はフラつく足取りでトンネルを出た後、90度右に曲がって
小屋に入ったことになります。
「…なんか、今日は眩暈がしてたからなー…もう帰ろうかな」
などと思いながら小屋の中をもう一度、目を凝らして見てみました。
やはり内部は暗く、何も見えません。
でも調度その時、後ろをヘッドライトを点けた(当たり前ですが)車が通り
抜けました。
その時、全部見えたんです!中が。
お化けなんかいませんよ。
でも見たんです。
あの大きな窯の蓋が開いて口を開けているのを。
もし、あの時…もう少し勢いがあったら私は窯の中に入っていた、
という事になるんですね。
別にそれだけで、どうという事はないんですけど。
焼かれる訳でもありませんし、窯から出れなくなるという事もありません。
単なる偶発的な出来事です。
鍵を閉め忘れて、風でドアが開いた。たぶん窯の蓋は衛生上(?)の理由
で開けてあるんでしょうね。
たまたま、そこへ私が小屋に入ってしまった。
それだけです。
それだけのことです。
更新日:2009-06-13 18:20:24