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「そういえば私、せっかく10個の話を持ってきたのに9個しか
話せなかったわ。誰か余分に喋ったでしょ?」
「いや、それは無いと思うけど…」
スタッフの一人が嫌な予感がしたのか、携帯でバンに乗り込んだ
一人に電話して調べさせる。

「電話しておいた。誰が多く喋ったか、すぐに犯人がわかるよ。
そいつは罰として今度、飲みに行ったとき奢りな」
「あはは、それはいいねー。誰だろうな」
早送りしてチェックしているとはいえ、時間はかかるだろう。
お寺を出て1時間ぐらい経っただろうか?バンのスタッフから
やっと連絡が入った。

「ちょっと止まってくれ。皆で録音を聞いてもらいたいんだ」
3台の車とバイクは、広い田舎道の路肩に停めた。
「どうした?犯人が分かったんだろう?」
「うん、それがさ、これを聞いてよ。これ誰の声?調度100番目
なんだけど…」
カー電源を使ってレコーダーが回ると、スピーカーから声が出た。
「…最後は私が話します…」

「ほら、これ誰の声?」一旦、再生を一時停止にして皆に聞く。
「いや、誰だろう?女性の声だから水島さんか谷本さんか木下さんか
有田…さん」
「私の声じゃないです」
名前を呼ばれた4人全員が否定した。

「マジ?最後って何の話しだっけ?もう後半、疲れちゃってまともに
聞いてなかったよ」
「俺も」
「私も覚えてない」
全員が覚えてなかった。もちろん私は興味もないので最初から全く
話の内容など気にもしていなかった。

「と、とにかく聞いてみようぜ。最後まで聞けば誰が嘘ついてるか
分かるだろ」
この時、初めて私の背中に冷たいものを感じ、後ろを振り返ったのですが
何もありませんでした。
頭上を覆う木だけが重くのしかかった。
(こんな所に誰もいるわけないじゃないか…)

「じゃ、続けるよ」
一時停止が解除され、先ほどの声が流れます。
「…私は人が死ぬとどうなるか話します…死んだ後…どこへ行き、
何を見るか話します…」
私の記憶はここまでです。どうやら、この後、私は失神したらしいです。
自宅に送り届けてもらいました。
両親に担がれベッドに入ったみたいですが何も覚えていません。


翌日、熱を出して大学は休みました。
録音された音源が、その後どうなったのか知りません。
放送されたかもしれないので、知ってる人もいるかもしれませんね。
でも私は確認することも無く、バイトを辞めてしまいました。
怖かったんです。
今まで信じなかったものを急に信じるようになると、その恐怖は倍増
します。

それにしても、あの女の人の声はなんだったのでしょう…?

私は、この体験後、次々と恐ろしいものを見聞きする事になります。
いったい私の中に何が起きたのか…。

さて皆さんは、今年の夏『百物語』を体験してみますか?

更新日:2009-06-11 14:59:48

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