• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 31 / 332 ページ

*** Chapter 08 牧童種と王朝 ***

 王族を始め、世の中の仕組みの頂点にある者たちは長命だった。長命であることが牧童(ぼくどう)種の証明に他ならなかった。
 民のなかでは、牧童種(ぼくどうしゅ)の徴(しるし)は血の継承によらなかった。徴(しるし)は突然に家系に現れた。壮齢をいつまでも重ねる家族を見て、牧童種を一家に授かった事を知り、遠い縁戚(えんせき)までが欣喜雀躍(きんきじゃくやく)した。
 五十歳を越えて体躯(たいく)、精神に老化を刻まなければ、それが牧童種の証となった。長命が故に彼らは世の中の仕組みに深くかかわり、世の中の動静を統(す)べ、あたかも民を御(ぎょ)するがごとき存在になった。それが牧童種と称される由縁だった。
 王族だけは血脈に牧童種の因子(いんし)を継承した。神の顕現(けんげん)に目見(まみ)え、王家の井戸から汲(く)んだ生命水を飲むことによって、王となる者は血に隠されていた宿命を顕在(けんざい)させた。王の血を継いだ王族たちは皆長命で、人によっては何らかの神秘能力を有した。それでも、血が薄まり、系譜が遠くなればその徴(しるし)も弱められた。一たび、王が覆(くつがえ)れば、元の王族の血から牧童種の徴は系譜の流れと共に消えていった。
 長命が故に王族の系譜の拡大は容易だった。過去には数万人に及ぶ王家を築いた絶倫(ぜつりん)の王もいたが、血で血を争う骨肉の戦乱を招いた。クオーネ王の父王、ニウソー・ザグニクシオ先帝の時代までは、王位は流血で継承されてきた。
 ニウソーは、野心を持った血族が無尽に蔓延(はびこ)ることを恐れた。そこで彼は王家を守るために、王族が履行しなければならない幾つかの掟(おきて)を創(つく)った。
「王族は生涯に、生存する五人までの子供を、百歳から二百歳の間に設けよ」
 掟の一つが王族の拡大範囲を狭くした。拡大の範囲が狭まれば、王の目は王族に行き届いた。
 それでも、ニウソーは不安を消すことができず、情報網を充実させた。彼は秘密機関を設け、暗躍させた。王権の行使は王族や貴族ばかりでなく、民衆の蜂起をも想定していた。
 彼の情報網に掛かった王族、貴族、そして民は秘密機関の急襲を受け、拉致(らち)され、殺害された。その際、真実は取り沙汰されなかった。
 ニウソーはそうして、王権を守り、平和を維持した。

更新日:2008-12-03 03:15:12