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小説

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*** Chapter 07 観察局 ***

 受付の側を通るロウを目敏(めざと)く見つけて、受付の女性たちがはにかむような笑顔で対応してきた。
「ロウ様、おはようございます」
「師長様、おはようございます」
 短く刈った黄金色の髪が、高い天井から降り注ぐ柔らかな照明で淡く輝いた。鮮やかな青色の瞳は優しさを漂わせているが、得体の知れない彼の能力が、神秘性や不可思議さを醸(かも)し出した見えない仮面を彫りの深い青白い顔に被せていた。
 それでも、若くして観察局の観察師長に昇進した最近は、府庁内で女性たちから彼の容姿や能力が取り沙汰され、噂(うわさ)の的になっていた。
「おはようございます」
 ロウも笑顔で応えながら、五十台設置された生命識別感応装置の受付に一番近い所を潜って府庁内に入った。
 飛翔能力にどんなに長けていてもここを通らなければ、だれも府庁内に入ることはできなかった。
 生命識別感応装置にはそれぞれ近衛兵が二人ずつ付いていた。高い立ち襟の濃紺の制服は、王国政府庁舎の入り口に重厚な荘厳さを醸(かも)し出していた。
 左の肩章の肩口から金色と朱色を捩(ねじ)り合わせた太めの飾り紐(ひも)が、制服の前面を巻くように三段、弛(たわ)みをもって垂れ下がり、幅と厚みがある銀色の皮帯(かわおび)が腰に巻かれている。左の腰には真っ赤な鞘(さや)に収められた見事な装飾の柄(つか)をもつ剣が下げられていた。
 ロウが通ると彼等は濃紺の制服の胸の前に右腕を水平に留める敬礼をした。
「おはようございます」
 入口の大広間は早い朝の時間にもかかわらず、かなりの数の登庁者たちで騒然としていた。いくつもある入口から入ってきた彼等は次々に、空いた生命識別感応装置を潜って行った。近衛兵たちは彼等が通るたびに丁寧(ていねい)に敬礼を繰り返していた。
 高い丸天井の広大な空間に、近衛兵たちの長靴の踵(かかと)が高らかに鳴らされる音が休み無く響き、交わされる朝の挨拶(あいさつ)がこもった音で残響を残した。
 昇降機は百人がゆったりと乗れる広さで百階までの一般用が二十台あり、高層の王宮や王宮内府に直行するものが五台あった。二台の特に荘厳な飾り扉の前には近衛兵が十六人ずつ整列していた。

更新日:2008-12-03 03:03:05