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小説

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*** Chapter 05 二つの波動 ***

 満天の星空は光の天蓋(てんがい)となり、一つ一つの煌(きら)めきが語り合うように息づいている。
 一際輝きを強くした星々を結んで、語り継がれたたくさんの物語は佳境(かきょう)に入っていた。
 その星空の遥か下、ちょうど雲の浮かぶ高さに淡い光の帯があった。ぼんやりと白んだ帯は風にたなびくようにゆっくりと蛇行しながら流れていた。
 帯は幾筋もあり、暗い地平線の其処彼処から沸き上がり、雲のように漂い、中天に届くと瞬く間に消えた。
 この夜、一筋だけ月明かりを照り返したように強く輝くうすい雲があった。新星にも似た煌めきを中心に包み込み、虹色の輝きを僅かに帯びたそれは、万丈(ばんじょう)に至っても消える事がなかった。
 小さな波動を初めに感じた。ロウはそれで目を覚ました。真夜中だった。
 本震を予想して床の中で彼は身構えた。時を待たずに大波が押し寄せてきた。それは、今までに彼が経験したことがない揺れだった。
 相反する二つの波が相乗し、身体が共鳴して激しく振動した。
 寝床の上で大きく上下に弾んで夜具を飛ばした。部屋が瞬間に掻(か)き消えて、不気味な漆黒の暗闇に包まれた。
 次の瞬間に真っ白な光りが爆発した。怖気(おぞけ)が一瞬に吹き飛び幸福感に満たされた。
 死を覚悟した。それほどの衝撃だった。
 激痛を残してロウの身体を貫いた二つの波動は直ぐに消えた。
 身体は味わったことがないほどの疲労感に冒されている。
 ゆっくりと目を開けると、いつも通りの古めかしさを漂わせた部屋の風景だった。ロウを暖かく包んでいた夜具だけが床に散乱していた。
 まだ鼓動は激しく打っている。荒い息遣いも収まってはいない。意識は朦朧(もうろう)として、身体も痺(しび)れて起き上がれそうにもなかった。
 彼はまた目を閉じた。混乱する思考を立て直しながら、この予兆から何が起きるのかを思い巡らせたが、訝(いぶか)しさだけが残った。
 大惨事が起きる時、重要人物の死、力を備えた者の誕生、それらの予兆を他の誰よりも彼は敏感に感じた。
 悪い時と良い時では、彼を貫く光の色彩や強さが違った。光は温度と明暗の度合を伴ってロウの心と身体を激しく揺さぶった。光の波動のあらゆる情報と長年の経験から彼はかなり精度の高い結論を導き出せた。

更新日:2008-12-03 02:41:09