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小説

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*** Chapter 03 夢の狭間で ***

「あなたはだれなの。私をいじめないで」
 小さな女の子は怖(こわ)がっていた。彼女の怯(おび)えが悲しかった。
 話しかけるのだが、女の子には解らないらしい。
 手を伸ばして金色の髪に触れてみた。
 途端に女の子が泣き出した。
 思わず手を引っ込めたが、髪に触れた指の先に温かな安らぎが残っていた。

「女の子の夢を見た」
「どんな夢だ」
「女の子は、わたしを怖がっていた。触れようとすると泣き出した」
「はっきりと、覚えているな」
「覚えている。私は幼子(おさなご)だった。どうしてだ」
「わからない。忘れてしまえ」
「髪に触れた時のあの温かさは、切ないほど懐(なつ)かしかった」
「生命(いのち)の温かさだ。それと」
 黒衣の男は言いかけて黙った。男は焚き火を棒で突いた。静かだった焚き火が燃え上がって、小さな火の粉を踊らせた。

 次の夜も、また次の夜も女の子の夢を見た。
 女の子は相変わらず怯(おび)えていた。
 夢を夢として見ると言うより、現実の事象として理解した。
 目覚めると忘れてしまう他の夢と夢の隙間(すきま)に、織り込まれるように女の子の夢は続いた。
 暫くすると、小さな女の子が少しだけ大きくなっていた。
 その夜、女の子は怖がらなかった。

「名前はなんていうの」
「愛子」
 心にふっと浮かび上がった名前だった。懐かしい気持ちがした。
「私はオウリ。おともだちに、なりましょう」

更新日:2008-12-03 02:25:58