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9 雨に濡れて

僕はあの電話がかかってきて以来、
世界が自分のまわりで
ぐるぐるぐるぐる
まわっているような気分だった。

何も見えないし、
気持ち悪かった。

ずっと、頭のなかで
神様たすけて、
という自分の叫び声が
非常ベルみたいに鳴り響いていた。

島村に部屋から引っ張りだされて、
池畑と話をして、
なんとか少し、ふらふらしながらも
歩けるような感じになった。

でもまだとても一郎と話せる気がしない。

今朝は逃げるように家を出て、
時間ぎりぎりまでマクドナルドにいて、
ミーティングが終わってすぐに飛び出してきた。

とても仕事なんて気分ではなかったが、
そんなこともいってられない。

島村がすすめてくれたとおり、
行きやすいところから行くしかなかった。

営業のいいところは、
多少なら仕事に融通がきくところだった。
あとで頑張れば今のぶんも
とりかえしがきく。

ハイブリットの社用車に一人乗り込み、
シートをぐいぐい前につめて、
僕は名簿と地図を見比べた。

北区のほう行こうかな、と思った。
チャクロのところへいって、
元気がでたら、
帰りに手稲区をまわればいいと思った。

電話をかけたら
社長さんがうれしそうに「おいでおいで」
と言ってくれた。

車を発進させて、
創成川に向い、
石狩街道にのった。


更新日:2009-06-12 11:10:56

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