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『緑化計画』同好会8【泣き上戸】

挿絵 301*196

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島村です。

ツルも俺も酒に弱いので、
二人で飲むといろんなことが起こります。
後で考えると、もしかして夢だったんじゃね?と
思うようなやりとりも多いです。

ちなみに、ツルは俺と二人のとき、酒が入るとよく泣きます。
他のやつがいると全然なんですけどね。
かわいいでしょ。

こんなことがありました。


「…なにアンニュイになってんの、ツル。」

「んー、さっきさあ、
会社で時間があまったから、
インターネットみてたの。」

「なに、アダルトサイト?」

「…うさぎ。」

「…?」

俺が両手を頭のうえで耳にすると、
ツルはうなづいた。

「…うさぎの検索すると、
いっぱいうさぎの写真がでてきて、
すげかわいいの。」

「…」

「でもね、一緒に、かならず、
うさぎの肉の話がでてきて、
フランス料理のページだったりするの。
うさぎ、くっちゃうの。
かわいそうだろ?!」

「えっ、ああ、うん。まあね。」

「…動画なんかひどいんだぜ。

うさぎさん
うーうー怒ってるのをさ
『ぶた鳴き』とかたいとるつけたりさ

せまーい檻ん中で
うさぎさんが歩こうとしてもばしょがなくて
上にぴょこびょこはねてるのを
笑いものにしたり

すっごく太らせてるのを
笑いものにしたり

もう、もう、涙無くしては見られない!」

「…あ、ああ、
知らなかったんじゃないの?
飼い方とかを…
犬とか猫でもそうなっちゃう飼い主いるし…」

「きいてくれよ!島!」

「き、きいてるよ!」

「沖縄にうさぎの島があるんだ!
推定1000羽のうさぎが繁殖してる
無人島なんだよ!

昔だれかが持ち込んだうさぎが
天敵のいない島でふえちゃったんだ。
うさぎのしまだよ。
見放されたうさぎのつくったパラダイスさ!

…隣の島の人、
たまにそのうさぎを捕まえにきて
食うんだって。
管理人に2000円はらうんだって。」

「もともと食用に飼ってたんじゃないの?
日本も戦争の前後はまだ全然うさぎ食って…」

「うさぎさんは人間の都合で持ち込まれて
人間の都合で置き去りにされたんだぞ!
それでも運命に負けずに
その強い繁殖力で生き延びたんだ!
でもでも、それをまた更に食うっていうんだぞ!」

「えー、あー、うん、だからその…」

「うさぎさんがかわいそうだ!!」

「…いやでもとなりの島で生きてる人間だって
物食わずに生きてくことはできないし
たまには美味いもの食いたいのが人情では…」

「あんなふわふわの可愛いうさぎさんを!
インターネットなんか!
インターネットなんか!
知りたくなかったそんなこと!」

「…わかった、わかったから泣くなよ。」

「別のところにも同じような島があって…
そこにわざわざ
うさぎを捨てにくる人がいるんだって…
でも、飼いうさぎは弱いから
ほとんど
野良にはなれないんだって…」

「…悪い飼い主だな。
無責任だ。
…泣くなよ、ツル。」


俺は話をそらすために
枝豆とサラダを注文しました。


「…なあ、島、聞いてよ。」

「聞いてるよ。」

「…俺、小学生のとき、
飼育係だったの。
そんで、学校のうさぎさん、
俺がほぼ一人で世話してたの。
だって他のヤツ来ないんだもん。」

…枝豆とサラダ程度では駄目でした。

更新日:2009-07-01 09:36:51

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