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『風の強い午後』同好会7【うさぎじま】

挿絵 640*480

一郎は、基本、僕がベッドにひっくりかえってると、
寝てるものだと思っている。

ただひっくりかえってるだけのときもあるんだけど。

…まあ、別にいい。
起きてることをアピールしたかったら、
ベッドの上に座るなり、
ベッドの上から手をふるなりすればいいことだ。

そうすると往々にして
「さそってるw」
と言われがちで
ちょっと場合によっては不都合なんだけど…。


それより、寝てると思われてるので
けっこう便利だったりするときもあるのだ。

たとえば、
一郎がPCで何を見ているか
まるわかりだったりする。


このあいだ
すっごくそわそわして見ていたときがあって、
「…おんなのはだかか?」
と思って見てみたら、

『休暇村 大久野島』

というページだった。

なんだろう、と思ってそのまま見ていたら、
『大久野島』、で検索しはじめて
見るページ見るページ、
すべて うさぎ・うさぎ・うさぎ。

なんだ?!
と思った。


一郎がいないときに勝手にPCで
『大久野島』を検索してみたら、
おおくのしま、という
瀬戸内海に浮かぶその島は、
うさぎ愛好家の夢の国なのだった。

昔、戦争のとき、毒ガス工場がこっそりあって、
地図からは島が消されていたんだそうだ。

毒ガスが漏れたときすぐ検知できるように
うさぎを島に放したらしい。

戦争が終わって
工場はなくなって
今は住む人もいないけど

綺麗な廃墟とうさぎたちだけは
ひっそりと島にとり残され
うさぎは
そのすさまじい繁殖力で
増えて増えて
ふえまくった。

今はお船がつくと、
うさぎさんが出迎えてくれるそうだ。
売ってる餌をあげることもできて
「兎人(うさんちゅ)」と書かれたTシャツや
写真集を買うこともできるのだった。

宿泊できる施設もできて、
長期休暇の旅行プランもあるらしい。

ははあ、一郎は、
ここにいきたいんだな、
と、わかった。


僕は、べつに、一郎のうさぎ好きは
なんとも思ってないのだけれど
一郎は、あまり他人には言いたがらない。
知ってるのは仲のいい友達や家族くらいだ。

日常の食器はミッフィーちゃんなんだけど
人に見せる食器はちゃんとノリタケとかだ。

一郎には、「兎飼っていいよ」と日々いってるのだが
一郎は「うさこがいるから、うさぎいらない」と
いつも変な操立てをする。

…だが、さすがにこの島は我慢できないだろ、
という気がした。

いつか遠慮がちに
「うさこ、あの、お願いがあるんだけど…」
とか言い出すに違いない。

北海道から瀬戸内海となると、タイヘンな距離だ。
お金もそれなりにかかる。

今、お金握っているのは僕なので
なんといって持ちかけてくるのか
とても楽しみだ。

ちなみに、いつのまにか本棚には
どこで買ったのか
「うさぎじま」という写真集が並んでいた。

言い出したら、つきあったげようと思っている。

たまにはカメラでもさげて、旅行もいいよね。




更新日:2009-06-29 14:17:10

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