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小説

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回顧・死別

 ・・電話を切り、空を仰ぐ香月だった・・脳裏にこれまでの3年間が過ぎる・・(プロローグの回想シーン)
 この孵化は安閑として成し得た事では無かったからだ。そして・・やはり神は1羽の仔鳩しか許してくれなかった。人間で言う年齢が70歳を超える老鳩から産卵をさせ、有性卵を得る事自体が無謀であった。まして、競翔で酷使されたネバーの体力では、奇跡にも近い事では無かっただろうか・・。しかし・・この両鳩から卵を得られた時点から時は大きく変わろうとしていたのだった。香月にはこの3年間の出来事が頭に過ぎった・・。
この年初秋・・・・・・・・・・・・・・・・
 2個の卵が揃った頃・・ネバーは卵を抱かなくなった。そして・・白竜号の燃える瞳からは、輝きが失せてしまった。この事に気づいた同時期・・白川氏の体調は悪くなり、寝込む日が続いたのだった・・そんな初夏の夕刻・・。
 香織の電話が、風雲急を告げる・・
「香月君・・おじいちゃんが・・白川のおじいちゃんが!」
 涙声は擦れて聞き取れない。
「何だって! どうしたの!香織!香織!」
 昼過ぎからの胸騒ぎは・・この事?香月はやっとの事で、白川氏が危篤と言う事を聞き取ると、両親に急を告げ、夕刻の道を香織を乗せて、バイクで走った。香織の目は真っ赤・・・二人は一言も発しなかった。風邪をこじらせていたと言う心配が、まさか危篤に繋がる事だとは・・。2人の顔を見て、真っ白い顎鬚で、くしゃくしゃの笑顔でいつも迎えてくれた、優しい白川氏の命が?何故・・突然に・・。
 白川氏の家にたどり着いた時。周りを覆っていた重苦しい雰囲気は現実となっていた。高橋会長、そして・・川上氏が香月達を見て・・首を静かに横に振った・・
「いや・・いやあ!じいちゃん!いやああ!」
 香織が枕元にうつ伏せて大声で叫んだ・・。
「な・・なんで?じ・・じいちゃん」
 香月はそれだけ言うと、嗚咽を漏らした。川上氏も肩を震わせて泣いた。高橋会長は、真一文字に結んだ口が震え、目からは大粒の涙が零れた・・。
「おじいちゃん!おじいちゃん、香織よ!分かる?ねえ、ねえ!」

更新日:2008-12-10 21:19:36